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産地と窯元

瀬戸焼の招き猫とは?古瀬戸の特徴や歴史、出会える場所を解説

この記事でわかること

  • 瀬戸焼の招き猫は、細身ですらりとした磁器が特徴
  • 瀬戸は明治30年代に磁器の招き猫を量産しはじめた
  • 古瀬戸には中世のやきものと招き猫の型の2つの意味がある
  • 瀬戸では9月末の祭りで実物に出会える

瀬戸焼の招き猫は、愛知県瀬戸市で磁器の素地から作られてきた細身の招き猫です。明治30年代にこの町で量産が始まり、海外向けの置物づくりとも結びつきながら、100年以上作られてきました。

「古瀬戸の招き猫」という言葉を目にして、古い骨董品のことか、形の名前なのか迷った人もいるでしょう。瀬戸の土と技術、言葉の意味を順にたどると、店先や展示で出会う一体の見え方が変わります。

日本六古窯や瀬戸市、愛知県の公式サイトの情報をもとにまとめ、瀬戸の窯元への取材内容を加えました。瀬戸と常滑の総論は愛知の記事に任せ、この記事では瀬戸の招き猫だけを掘り下げました。

瀬戸焼の招き猫とは

「黄瀬戸鉢」。黄色い釉に緑の斑点がある瀬戸の鉢
瀬戸「黄瀬戸鉢」(東京国立博物館蔵)/出典:ColBase

瀬戸焼の招き猫とは、千年続く窯業の町・瀬戸で作られる磁器の招き猫を指します。姿の特徴と、その姿を支える土や焼き方を知ると、瀬戸の招き猫がなぜ白く細やかなのかが見えてきます。

瀬戸焼の招き猫の要点

  • 磁器で作られ、本物の猫に近い細身の姿が多い
  • 鉄分をほとんど含まない瀬戸の粘土が、白い素地を生む
  • 取材した窯元は高めの温度で長時間焼き、白い焼き上がりを優先している

磁器で作るすらりとした姿

瀬戸系の招き猫は、生きた猫を写したような細身の姿が目印です。愛知県の公式観光サイトも、柔らかな線や前掛けのフリルまで表現できる点を挙げ、瀬戸系を上品な猫と紹介しています。

工芸史研究者の畑中英二氏は、研究所の取材に「戦前に瀬戸で作られていた時は、招き猫ちょっと長いんですよね。長細いんですよ。」と語っています。畑中氏によると、二頭身の常滑系が登場するのは戦後のことです。細身の姿は、二頭身が広まる前から瀬戸で作られてきた形といえます。

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瀬戸系の招き猫の主な特徴

項目瀬戸系の招き猫
素材磁器
体つきすらりとした細身で、生きた猫の姿に近い
表現柔らかな線や、前掛けのフリルなど細かな表現が得意
形の決まり決まった形はなく、ポーズや表現はさまざま
古い型の呼び名細身で前垂れを着けた「古瀬戸」

決まった形がないのは、磁器なら細かな線まで写し取れるため、作り手ごとに姿を工夫できたからです。そのため同じ瀬戸系でも、顔立ちや手の上げ方、前垂れの柄は一体ごとに違います。

一方で招き猫そのものは、江戸の浅草で土を焼いた置物として広まったというのが、愛知県の観光サイトの説明です。愛好家団体の日本招猫倶楽部も、招き猫を日本で生まれた縁起物と紹介しています。

つまり瀬戸の招き猫は、江戸の土人形から始まった縁起物を、磁器の置物として作り直した存在といえます。瀬戸系を選ぶなら、細身の体の線と、描き込みの細かさに注目すると違いがわかるでしょう。

全国の産地ごとの姿の違いは、産地の記事で比べました。

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白い素地を生む土と焼成

瀬戸の招き猫の白さは、鉄分をほとんど含まない土と、高い温度での焼成から生まれます。瀬戸の木節粘土と蛙目粘土は鉄分をほぼ含まず、耐火性も高いと、日本六古窯の公式サイトは説明しています。

鉄分が少ない土は、焼いても色がつきにくく、白い素地を生かした絵付けや釉がけができるのです。だからこそ瀬戸では、染付の器から人形などの置物まで、白い素地を土台にしたやきものが育ちました。

研究所が取材した瀬戸の窯元フジコウセラミックも、白く焼き上げることを大切にしていました。焼成を担う藤井さんによると、窯は約1350℃を目安に、人の目で温度の上がり方を見ながら調整するそうです。

しかも、ほかより高めの温度で17〜18時間かけて焼くといいます。ガス代がかさんでも、焼き上がりの白さを優先しているのです。

もっとも、温度が1400℃を超えれば生地がもたず、形が崩れてしまうと聞きました。その手前の温度を見極める判断は、手順書ではなく職人の経験に支えられています。

検品も厳しく、ヒビや欠け、歪みのある品は出荷しない方針です。取材の詳しい内容は、窯元のインタビュー記事にまとめました。

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「古瀬戸」の招き猫とは

「古瀬戸の招き猫」の「古瀬戸」には、読み方も時代も異なる2つの意味があります。言葉の取り違えを防ぐため、中世のやきものと招き猫の型を分けて整理します。

二つの「古瀬戸」の意味

招き猫で使われる「古瀬戸」は、ふるせとと読む招き猫の型の名前です。同じ字でこせとと読むと、鎌倉時代から瀬戸で作られた中世のやきものを指します。

二つの「古瀬戸」の違い

項目古瀬戸(こせと)古瀬戸の招き猫(ふるせと)
指すもの中世の瀬戸で作られた施釉陶器瀬戸の招き猫の古い型
時代鎌倉時代から室町時代明治30年代から作られてきた型
主な姿四耳壺・瓶子・水注などの器細身で前垂れを着けた猫
確認できる資料の例瀬戸市指定文化財の古瀬戸瓶子など日本招猫倶楽部の復刻招き猫の解説など

こせとの古瀬戸は、釉薬をかけた陶器のことで、六古窯の公式サイトは当時の瀬戸を国内唯一の施釉陶器の産地と説明しています。瀬戸市も、鎌倉時代中期の古瀬戸瓶子を、武家の都・鎌倉へ多く運ばれた器として市の文化財に指定しました。

これに対してふるせとの古瀬戸は、瀬戸の招き猫の古い型を指す呼び名です。細身で前垂れを着けた、瀬戸系らしい姿が目印です。

そのため、招き猫を探すときの「古瀬戸」は、多くの場合ふるせとの型を指すと考えてよいでしょう。器としての古瀬戸と、明治以降の招き猫とでは、作られた時代が数百年も離れています。

古い瀬戸の招き猫を見るときの手がかり

「古瀬戸」は形の呼び名であって、作られた年代を示す言葉ではありません。この型は明治30年代から作られてきたため、古い一体も、近年の作り手が同じ形で仕上げた一体も同じ名前で呼ばれます。

だからこそ、名前だけで古さや骨董としての価値を判断するのは避けましょう。研究所では、古い招き猫の値段や真贋を判断できる公的な基準を確認できていません。

一方で、明治以来の瀬戸の招き猫の変化を知るなら、年代のわかる展示品と並べて見るのが確かな方法です。迷ったときは、名前より、来歴と実物の比較を手がかりにしましょう。

招き猫の手・色・形の分かれ方は、種類の記事で整理しています。

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瀬戸以外も含めた古い招き猫の見分け方と、売り買いの注意点は次の記事にまとめました。

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瀬戸焼の招き猫の歴史

岡田知一作「牙彫猫置物」。眠る母猫と戯れる子猫を写実的に彫った明治時代の置物
岡田知一「牙彫猫置物」明治時代・19~20世紀(東京国立博物館蔵)/出典:ColBase

瀬戸の招き猫づくりは、明治30年代に磁器で量産を始めたことが出発点です。その背景には、千年の窯業の蓄積と、海外から入った新しい技術がありました。

明治30年代に始まった磁器の招き猫

瀬戸の町は明治30年代、磁器の招き猫の量産に国内でいち早く乗り出しました。瀬戸市の観光協会と愛知県の観光サイトは、ともにこの年代を挙げて、瀬戸の招き猫の歴史を紹介しています。

瀬戸焼と招き猫の歩み

時期瀬戸のやきもの瀬戸の招き猫
鎌倉〜室町時代施釉陶器の古瀬戸を生産―
江戸時代後期磁器の生産が本格化―
19世紀石膏型による成形など西洋の技術を導入―
明治中期〜後期機械ろくろや転写、石炭窯が広がる明治30年代に磁器の招き猫の量産が始まる
平成8年(1996年)―来る福招き猫まつり in 瀬戸が始まる

その背景にあるのが、19世紀に瀬戸が取り入れた石膏型による成形などの技術です。六古窯の公式サイトによると、明治の中期から後期には動力の機械や転写の絵付けも広がり、大量に作る仕組みが整いました。

あわせて瀬戸では、人形や動植物をかたどった海外向けの置物、セト・ノベルティが数多く作られました。

招き猫は、型で形をそろえ、顔や柄を描き分ける置物です。つまり瀬戸の招き猫は、器の産地が置物づくりへ広がる流れの中で生まれたといえるでしょう。

江戸で生まれた招き猫が、海外へ広がるまでの全体の歩みは、歴史と由来の記事で扱っています。

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常滑焼の招き猫との違い

同じ愛知県の常滑焼(愛知県常滑市)と比べると、瀬戸焼の招き猫は素材も姿も、作り始めた時代も異なります。違いを短く表にまとめました。

瀬戸焼と常滑焼の招き猫の違い

項目瀬戸焼の招き猫常滑焼の招き猫
素材磁器陶器
姿細身で、生きた猫に近い丸い頭の二頭身で、大きな小判を抱える
量産の始まり明治30年代瀬戸より約50年遅れ、今の形は昭和20年代に誕生

一方で常滑焼の土は鉄分が多く、比較的低い温度で焼き締まると六古窯の公式サイトは説明しています。鉄分の少ない白い土を使う瀬戸とは、出発点の素材から違うのです。

優劣ではなく、土と時代の違いが姿に表れていると考えるとよいでしょう。二つの産地の成り立ちや常滑の招き猫通りは、愛知の記事と常滑焼の記事が詳しく扱っています。

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明治に始まった瀬戸の招き猫づくりは、型と手仕事を組み合わせながら、いまも作り手に受け継がれています。では、いまの瀬戸の職人はどんな一体を手がけているのでしょうか。

答えの一つに「Luxen Maneki」があります。招き猫研究所の運営元、株式会社日本招き猫総合研究所が手がけるブランドです。金彩は、瀬戸焼の伝統窯で働く職人が手描きで一点ずつ入れています。

瀬戸で招き猫に出会える場所

瀬戸の町では、毎年秋の祭りで瀬戸焼の招き猫に直接出会えます。あわせて市の中心にある瀬戸蔵では、招き猫を生んだ瀬戸焼の歩みにも触れられます。掲載した施設情報と日程は、2026年10月に各公式サイトで確かめたものです。

来る福招き猫まつり in 瀬戸

瀬戸では毎年9月末の土日に、町全体が招き猫で彩られる「来る福招き猫まつり in 瀬戸」が開かれます。磁器の招き猫を量産してきた町の歴史を背景に、平成8年(1996年)から続いている祭りです。

来る福招き猫まつり in 瀬戸の日程(2026年10月時点)

回開催日会場
第31回2026年9月26日(土)・27日(日)※終了名鉄瀬戸線「尾張瀬戸駅」周辺ほか
第32回2027年9月25日(土)・26日(日)詳細は準備が整い次第、公式サイトで発表予定

出典:愛知県公式観光サイト Aichi Now「第31回 来る福招き猫まつり in 瀬戸」
出典:瀬戸市まるっとミュージアム・観光協会「第32回 来る福招き猫まつりin瀬戸(2027年)」

見どころは「にっぽん招き猫100人展」で、公募を通った100人の作家による創作招き猫が並びます。瀬戸系の伝統的な姿とは別に、いまの作家がどんな招き猫を生み出しているかを、一度に見比べられるのが魅力です。

あわせて、招き猫メイクや猫耳などで招き猫になりきって町を歩く楽しみ方も、観光協会が案内しています。ただし内容は回ごとに変わるため、訪れる年の公式発表で確認しましょう。

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瀬戸蔵ミュージアムと瀬戸蔵セラミックプラザ

招き猫の背景にある瀬戸焼そのものを知るなら、市の中心にある観光拠点「瀬戸蔵」が手がかりになります。愛知県の観光サイトによると、瀬戸蔵の2〜3階には、瀬戸のやきものを紹介する瀬戸蔵ミュージアムがあります。

2階には昭和30〜40年代の瀬戸の町並みが再現され、歩きながら当時のやきものづくりに触れられる展示です。招き猫を量産してきた町の暮らしを知ると、展示や祭りで見る一体の背景も想像しやすくなるでしょう。

同じ建物には、瀬戸の窯元組合が直接販売する瀬戸蔵セラミックプラザも入っています。2020年6月にリニューアルし、瀬戸焼のいまを発信する売り場になりました。

もっとも、招き猫の取り扱いは時期によって変わる可能性があります。招き猫を目当てに訪ねる場合は、事前に施設へ問い合わせておくと安心です。

通販も含めた招き猫の買い方や、置物としての選び方は、それぞれの記事にまとめました。

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よくある質問

Q. 「せともの」という言葉は瀬戸焼と関係がありますか?

A. 関係があります。陶磁器全般を指す「せともの」は、瀬戸焼から生まれた言葉だと日本六古窯の公式サイトは説明しています。約1,000年途切れずに生産を続けてきた瀬戸の歴史が、言葉にも残っているのです。

Q. 瀬戸で招き猫づくりを体験できますか?

A. 毎年9月末の「来る福招き猫まつり in 瀬戸」では、招き猫づくり体験が用意されてきました。2027年は9月25日・26日の開催が予定されています。体験の中身や申し込み方法は年によって異なるので、瀬戸市観光協会の最新の発表を確認してください。

招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」

瀬戸焼の招き猫は、白い土と型の技術、そして職人の手で100年以上受け継がれてきました。由来を知るほど、迎える一体も作られた土地と作り方まで納得して選びたいと感じるのではないでしょうか。

研究所が手がける「Luxen Maneki」は、伝統窯の職人の手描き金彩で仕上げる瀬戸焼の招き猫です。量産品と違うのは、注文を受けてから一点ずつ製作し、約4〜6週間かけてお届けする点にあります。

完成した招き猫は、特製の桐箱に入れてお届けしています。桐という木は湿気を吸って吐き、燃えにくい性質もあるため、かつては金庫の内箱の材料にもなりました。

まとめ

瀬戸焼の招き猫は、鉄分の少ない白い土を生かした、細身の磁器の招き猫です。明治30年代に石膏型などの技術を背景に量産が始まり、海外向けの置物づくりとも結びつきながら作られてきました。

「古瀬戸」という言葉は、こせとと読めば中世のやきもの、ふるせとと読めば招き猫の型の名前になります。型の名前なので、それだけで古さや価値は判断できません。

瀬戸系の姿を実物で確かめるなら、毎年9月末の祭りに足を運んでみましょう。一体を選ぶときは、どこで、どんな土と作り方で生まれたかを確かめると、手元に置く招き猫への愛着が深まるはずです。