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産地と窯元

招き猫の産地はどこ?有名な県や各地の特徴を紹介

この記事でわかること

  • 招き猫で知られる県は、瀬戸と常滑の二大産地がある愛知県
  • 「三大産地」を公的に定めた資料は見当たらない
  • 東京の今戸焼、石川の九谷焼、佐賀の有田焼にも招き猫がある
  • 産地ごとの姿の違いは、土と焼き方と型の系統から生まれる

招き猫の主な産地は、愛知県の瀬戸と常滑です。愛知県の観光サイトも、瀬戸と常滑を「二大産地」と呼んで紹介しています。

一方で、招き猫は江戸の今戸焼に始まり、石川県の九谷焼や佐賀県の有田焼など、ほかのやきものの産地でも作られてきました。産地ごとの違いを知ると、店先で見る一体がどこの土から来たのかを想像できるようになります。

この記事では、県や市の観光情報、辞典や博物館の解説、愛好家団体の公開資料をもとに、各地の産地を一覧にしました。それぞれの産地を詳しく扱った記事への入口としても使ってください。

招き猫の主な産地

窯道具を積んだ壁が続く瀬戸の窯垣の小径
愛知県瀬戸市の「窯垣の小径」/写真:Asturio Cantabrio(CC BY-SA 4.0)

招き猫の産地は、磁器・陶器・土人形という素材ごとに特徴が分かれます。まず全体を一覧で押さえ、そのうえで「三大産地」という呼び方を確かめましょう。

招き猫の産地の要点

  • 量産の中心は、愛知県の瀬戸と常滑
  • 招き猫の古い作例は、東京の今戸焼の土人形
  • 「三大産地」を公的に定めた資料は見当たらない

主な産地の一覧

招き猫の産地を並べると、始まった時代も素材も大きく異なることがわかります。公的な資料や産地の観光情報で確かめられた産地を、表にまとめました。

招き猫の主な産地

産地県素材姿や絵付けの特徴歴史の目安
今戸焼東京都素焼きの土人形丸〆猫に代表される素朴な姿嘉永5年(1852年)に丸〆猫が評判を呼ぶ
瀬戸焼愛知県磁器細身で前垂れを着けた姿など、形はさまざま明治30年代に磁器の量産が始まる
常滑焼愛知県陶器丸い目の二頭身で、大きな小判を抱える昭和20年代に今の形が生まれる
九谷焼石川県磁器五彩の上絵付けによる豪華な絵付け大正時代に輸出された記録がある
有田焼・伊万里焼佐賀県磁器白磁や染付、色絵など器と同じ技法器の産地として17世紀初頭から続く

このうち、招き猫を産業として大量に作ってきたのは、瀬戸と常滑です。今戸焼は招き猫の古い形を伝える産地で、九谷焼と有田焼は色絵や白磁で知られる磁器の産地にあたります。

招き猫が、土人形から陶器、磁器まで素材を変えて作られてきたことは、この一覧からも読み取れるでしょう。

なお、九谷焼の輸出の年代は、朝日新聞の「sippo」の年表にある記録です。ほかの資料では確かめられていないため、目安として読んでください。

あわせて日本招猫倶楽部は、主な産地の一つとして岐阜県の多治見市も挙げています。ただし、多治見の招き猫の歴史を詳しく記した公的な資料は、研究所では確認できていません。

「三大産地」という呼び方

「招き猫の三大産地」という言葉はよく検索されますが、三つの産地を公的に定めた資料は見当たりません。研究所が確かめた範囲では、産地の挙げ方は資料によって異なります。

資料ごとの産地の挙げ方

資料挙げている産地
愛知県の観光サイト瀬戸と常滑を「二大産地」と紹介
日本招猫倶楽部瀬戸市、常滑市、岐阜県多治見市、石川県の金沢市と小松市など

このように、資料によって挙げる産地の数も顔ぶれも異なります。つまり、三つ目にどこを挙げるかは、書き手によって変わると考えるのが自然でしょう。

だからこそ、産地を選ぶときは「三大」という言葉より、素材と姿の違いに目を向けてみましょう。

招き猫で有名な愛知県の産地

招き猫で有名な県といえば、瀬戸と常滑の二つの産地を持つ愛知県です。同じ県の中でも、二つの町の招き猫は素材も歩みも異なります。

磁器の招き猫を量産した瀬戸

瀬戸は、明治時代に磁器の招き猫づくりを始めた町です。愛知県の観光サイトは、瀬戸を明治30年代に日本で最初に磁器の招き猫の量産を始めた地と紹介しています。

瀬戸の土は鉄分をほとんど含まないため、白い素地のやきものを作れます。そのため、白さを生かした細身で前垂れを着けた「古瀬戸(ふるせと)タイプ」などの磁器の招き猫が生まれました。

人形や鳥をかたどった輸出向けの細かな置物も、瀬戸で数多く作られてきたのです。

瀬戸の招き猫の歴史や、「古瀬戸」という言葉の二つの意味は、瀬戸焼の記事で詳しく扱いました。

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二頭身の招き猫を広めた常滑

常滑は、小判を抱えた二頭身の招き猫を全国に広めた町です。とこなめ観光ナビによると、丸い頭と大きな目をもつ二頭身の今の姿は、昭和20年代に生まれて全国に広まりました。

工芸史研究者の畑中英二氏は、研究所の取材に「常滑系招き猫に代表されるような、丸二つみたいな。もう、かわいくてしょうがないですよね。」と語っています。畑中氏は、丸く整った形は人を安心させると見ています。二頭身の姿が全国に広まった背景には、丸い形がもつこの親しみやすさもあったのでしょう。

常滑が招き猫を手がけたのは、瀬戸よりおよそ半世紀あとだったと、愛知県の観光サイトにあります。きっかけは、町を支えてきた産業が下火になったことでした。

一方で土にも違いがあり、常滑の土は鉄分を多く含みます。低めの温度でも固く焼き締まるのが、この土の性質です。白い磁器の瀬戸とは、出発点の土から違うのです。

二つの産地の違いと、常滑で招き猫に出会える場所は、それぞれの記事で紹介しています。

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愛知のほかの招き猫の産地

九谷「色絵花卉文九角皿」。赤・青・緑で花と鳥を描いた九角形の皿
九谷「色絵花卉文九角皿」江戸時代・17世紀(京都国立博物館蔵)/出典:ColBase

愛知県のほかにも、東京・石川・佐賀のやきものの産地で招き猫が作られてきました。量産の産地とは違う、それぞれの土地の素材と技法が見どころです。

東京の今戸焼

今戸焼は、東京の台東区今戸を産地とする素焼きのやきものです。器や瓦を焼くかたわらで作られた土人形を今戸人形といい、その一つが招き猫の丸〆猫でした。

京都文化博物館は、丸〆猫を、招き猫という名前と姿が記録上そろって確かめられる例として挙げています。その時期は嘉永5年(1852年)です。

もっとも、今戸人形づくりは太平洋戦争中にいったん途切れました。いまは、古い型や資料をもとに昔の姿を再現する作り手が、その技を伝えています。

江戸の招き猫の素朴な姿を知りたいなら、今戸焼から入るとよいでしょう。今戸人形の現在の作り手については、今戸焼の記事に詳しく書きました。

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石川の九谷焼

九谷焼は、五彩の上絵付けで知られる石川県の磁器です。緑・黄・赤・紫・紺青の和絵具で描く華やかな絵付けが、招き猫にも生かされています。

日本招猫倶楽部が挙げる招き猫の主な産地にも、九谷焼の製造地域である金沢市と小松市が入っているのです。

17世紀半ばに生まれた九谷焼は、いったん途絶えてから19世紀に再び興りました。そのため作風の名前が時代ごとに整理されており、古い品を調べる手がかりにもなります。

色絵の招き猫にひかれる人は、九谷焼の作風を知っておくと選ぶ楽しみが増すでしょう。

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佐賀の有田焼・伊万里焼

有田焼と伊万里焼は、佐賀県有田町を中心とする地域の磁器を指す二つの名前です。江戸時代は積み出し港の名から伊万里焼と呼ばれ、明治以降に有田焼の名が広まりました。

日本の磁器づくりは、17世紀初頭のこの地から始まったと伝えられています。ただし産地の中心は器づくりで、招き猫の主な産地を挙げた愛好家団体の一覧に佐賀県は入っていません。

一方で、器で磨かれた白磁や染付、色絵の技法は、置物にも生かせる技です。白い磁肌や藍色の線を楽しみたい人には、目を向けてほしい産地といえます。

二つの呼び名の関係と、有田や伊万里で窯元に出会える催しは、有田焼の記事にまとめました。

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産地によって姿が違う理由

産地ごとに招き猫の姿が違うのは、土と焼き方、そして手本にした人形の系統が異なるためです。この二つを知ると、産地の名前から姿を思い浮かべられるでしょう。

土と焼き方の違い

招き猫の肌の色や質感は、産地の土がどんな性質を持つかで大きく変わります。日本六古窯の公式サイトによる瀬戸と常滑の説明を中心に、表にまとめました。

産地ごとの素材と焼き方

産地素材の性質焼き方の特徴
瀬戸焼鉄分をほとんど含まない粘土で、白い素地になる高い温度で焼く磁器
常滑焼鉄分が多い土で、低めの温度でも焼き締まる陶器として焼く
今戸焼土を素焼きにする焼いたあとに色を塗る土人形
九谷焼・有田焼陶石を砕いて作る磁器の土約1300度で焼き、色絵は上絵付けをして再び焼く

白い磁器の瀬戸や九谷、有田では、素地の白さを生かした細かな絵付けが映えます。一方で鉄分の多い常滑の土は、温かみのある陶器の肌になるのです。

工芸史研究者の畑中英二氏は、研究所の取材に「瀬戸と信楽の土は、非常に収縮率が低いので。」と語っています。焼き物は焼くと縮むため、縮みやすい土で大きなものを作ると、割れたりゆがんだりしやすくなるという説明です。土の性質は肌の色だけでなく、作れる大きさや形にもかかわっているのです。

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研究所が取材した瀬戸の窯元も、焼成の温度を高めに保ち、白い焼き上がりを重んじていました。つまり招き猫の色合いは、絵具だけでなく土と窯の判断から決まるといえます。

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手本にした人形の系統

産地ごとの姿の違いは、手本にした土人形の系統にも由来します。

たとえば江戸の今戸人形は、京都の伏見人形の影響を受けて育ったと、日本大百科全書は説明しています。

型は産地を越えて写されることもあるため、形だけで産地を決めるのは難しいでしょう。購入時は、産地の表示とあわせて姿を確かめるのが確かな選び方です。

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焼き物以外の人形の招き猫(木目込み・博多人形・張子・土人形)の産地は、別の記事にまとめました。

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土と型の違いを知ると、いまの産地の窯でどんな一体が作られているのかにも目が向くはずです。瀬戸焼の招き猫の今を伝える一体として、「Luxen Maneki」があります。

招き猫研究所の運営元である日本招き猫総合研究所が、六古窯の一つ・瀬戸焼で手がけるブランドです。金彩は伝統窯の職人の手描きで、一体ずつ仕上げられています。

産地の招き猫を見比べられる場所

常滑の丘から顔を出す巨大招き猫とこにゃん
常滑の巨大招き猫「とこにゃん」/写真:Hyppolyte de Saint-Rambert(CC BY 4.0)

産地の違いを確かめるなら、各産地の祭りや市が手がかりになるでしょう。日程はいずれも、2026年10月時点の公式発表によるものです。

産地の祭りと市

各産地では、窯元や作家の品が一度に並ぶ祭りや市が開かれます。主な催しを表にまとめました。

産地の主な祭りと市(2026年10月時点)

催し産地開催日
来る福招き猫まつり in 瀬戸愛知県瀬戸市2027年9月25日(土)・26日(日)予定
九谷陶芸村まつり(秋の茶碗まつり)石川県能美市2026年10月17日(土)・18日(日)
有田陶器市佐賀県有田町毎年4月29日〜5月5日
鍋島藩窯 窯元市佐賀県伊万里市毎年4月29日〜5月5日

出典:瀬戸市まるっとミュージアム・観光協会「第32回 来る福招き猫まつりin瀬戸(2027年)」
出典:石川県陶磁器商工業協同組合「九谷陶芸村まつり(秋の茶碗まつり)2026」
出典:有田観光協会 ありたさんぽ「イベント」
出典:伊万里鍋島焼協同組合「鍋島藩窯 窯元市」

このうち招き猫が主役の催しは、瀬戸の来る福招き猫まつりです。なお、ほかの三つは器が中心のため、招き猫を目当てにするなら、出店の案内を事前に確かめておきましょう。

窯元を訪ねて選ぶ方法は窯元の記事で、通販や専門店も含めた買い方は買い方の記事で紹介しています。

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よくある質問

Q. 海外で作られた招き猫もありますか?

A. あります。日本招猫倶楽部によると、国内の産地に加えて、海外での生産も盛んです。産地を確かめたいときは、箱や底の表示を見て選びましょう。

Q. 焼き物ではない招き猫もありますか?

A. あります。郷土玩具として、土人形のほか、張り子の招き猫も作られてきました。

Q. 岐阜県の多治見も招き猫の産地ですか?

A. 日本招猫倶楽部は、岐阜県多治見市を招き猫の主な産地の一つとしています。ただし、多治見の招き猫がいつどのように作られてきたかを記した公的な資料は、研究所では確認できていません。購入時は商品の産地表示で確かめてください。

招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」

産地を知るほど、招き猫は「どこの土で、誰の手で作られたか」で選ぶものだと感じられるでしょう。それでも、産地の表示だけでは作り手の顔までは見えないのが悩みどころです。

研究所の「Luxen Maneki」は、瀬戸焼の伝統窯で職人が金彩を手描きする招き猫です。注文を受けてから一点ずつ作る受注生産で、お届けまでは約4〜6週間をいただいています。

できあがった一体は、特製の桐箱に入れてお渡しします。湿気を吸ったり吐いたりする桐は燃えにくい木でもあり、昔は金庫の内箱にも用いられました。

まとめ

招き猫の主な産地は、磁器の瀬戸と陶器の常滑がある愛知県です。「三大産地」を公的に定めた資料は見当たらず、東京の今戸焼や石川の九谷焼、佐賀の有田焼でも招き猫が作られてきました。

産地ごとの姿の違いは、土と焼き方、手本にした人形の系統から生まれます。形だけで産地を決めず、表示とあわせて確かめましょう。

実物を見比べる場としては、各産地の祭りや市があります。気になる産地の記事から読み進め、土地ごとの招き猫の違いを楽しんでください。