この記事でわかること
- 研究所は赤い招き猫を病よけの色と定義する
- 公式2か所は赤を健康の色として紹介している
- 公式で厄除けを当てているのは赤ではなく黒
- 赤は江戸で疱瘡除けの色と信じられてきた
招き猫研究所では、赤い招き猫を病よけの色と定義しています。愛好家団体の日本招猫倶楽部は、赤に健康長寿の意味を当てています。常滑焼の窯元・梅月冨本人形園も、赤を健康の色とする点は同じです。
研究所が赤を「病よけ」と定義したのは、江戸の人々が赤を疱瘡除けの色と信じてきた歴史を重く見たからです。公式の意味と研究所の定義を並べながら、赤が選ばれてきた理由をたどりましょう。
赤い招き猫の意味
赤い招き猫の意味は、研究所の定義では「病よけ」です。公式の2か所は「健康」でそろっており、赤を厄除けや家内安全の色とする説明には、公式の裏づけが見当たりません。
招き猫研究所が定義する色の意味
招き猫研究所では、色ごとに託す願いを一つに定め、記事全体でこの表の言葉を使っています。赤を含む8色の定義は次のとおりです。
招き猫研究所の色の定義
| 色 | 招き猫研究所の定義 | 研究所の考え方 |
|---|---|---|
| 白・三毛 | 開運招福(どんな願いにも通じる基本の色) | 何色にも染まる白と、日本の猫らしい三毛は、願いを選ばずに福を招く基本の色 |
| 金 | 金運・仕事運 | 小判や黄金を思わせる金は、お金の巡りと、仕事や商いの実りを招く色 |
| 黒 | 厄除け | 夜の闇にも溶ける黒は、災いを寄せつけず、身と家を守る色 |
| 赤 | 病よけ | 古くから病を遠ざける色とされてきた赤は、病から身を守る色 |
| 緑 | 健康長寿 | 草木や若葉の色である緑は、いのちの勢いとすこやかさを表し、長く元気に過ごす願いを託す色 |
| ピンク | 恋愛成就 | 桜を思わせるやわらかなピンクは、恋心と良い出会いを招く色 |
| 黄 | 人望招福(人に慕われ、人が集まる運。いわゆる人気運) | 明るく人の目を引く黄は、人に慕われ、まわりに人が集まる運を招く色 |
| 青 | 学業向上(集中力・判断力の向上) | 澄んだ空や水を思わせる青は、心を落ち着かせ、学びに向かう集中と判断を支える色 |
研究所では、赤を「病よけ」の色と定義しています。赤は古くから、病を遠ざける色とされてきたからです。
疱瘡(天然痘)が恐れられた時代には、赤い色に病を退ける願いが込められました。研究所はこの赤の意味を大切にし、病から身を守る色として位置づけています。
一方で、すこやかに長く生きる願いは、研究所では緑に託しました。病を遠ざける赤と、いのちの勢いを表す緑とで、健康の願いを分けて考えるのが研究所の価値基準です。
公式2か所はそろって健康の色
公式の説明では、赤は健康と長寿を招く色です。赤い招き猫に当てられた意味を、2つの公式で比べると次のようになります。
赤い招き猫の意味(公式2か所の比較)
| 公式 | 赤に当てている意味 |
|---|---|
| 日本招猫倶楽部(愛好家団体) | 健康長寿 |
| 梅月冨本人形園(愛知県常滑市) | 健康招福 |
表のとおり、愛好家団体は「健康長寿」という言葉を使っています。常滑の窯元も、言い回しは違うものの健康を招く色としました。
色の意味は作り手ごとに分かれることが多いなかで、赤は珍しく説明がそろっている色です。ただし研究所は、赤に託す願いを病を遠ざけることに絞り、健康長寿は緑の色として定義しています。
緑を健康長寿の色とした理由は、緑の招き猫の記事で詳しく扱っています。
赤と黒、厄除けの招き猫の違い
公式2か所が厄除けを当てているのは、赤ではなく黒です。赤い招き猫を「厄除け」や「家内安全」の色と紹介する記事もありますが、公式の説明とは食い違います。
黒の意味は、日本招猫倶楽部が厄除開運、梅月冨本人形園が厄除招福でした。さらに日本招猫倶楽部は、白に家内安全の意味を添えています。
ただし、赤という色そのものには、魔除けの力が宿ると考えられてきた歴史があります。赤い招き猫に厄除けを重ねる説明は、こうした色のイメージから語られる意味と受け止めるとよいでしょう。
つまり公式では健康は赤、厄除けは黒、研究所の定義では病よけは赤、厄除けは黒と分けて考えるとわかりやすいでしょう。厄除けの意味で選ばれてきた黒い招き猫は、別の記事で扱っています。
招き猫の色の意味一覧
赤以外の色にも、それぞれ招き猫ならではの意味が込められてきました。白・黒・赤・ピンク・金の5色は、公式2か所でほぼ一致する一方、黄・緑・青は作り手によって扱いが分かれます。
色の意味の要点
- 公式では白は招福、金は金運の色
- 公式では黒は厄除け、赤は健康、ピンクは恋愛の色
- 黄・緑・青の意味を示す公式は1か所だけ
色ごとの意味(公式2か所の比較)
色の意味を確かめる手がかりは、公式2か所の説明です。日本招猫倶楽部と梅月冨本人形園が示す色ごとの意味を並べました。
招き猫の色と意味(公式2か所の比較)
| 色 | 日本招猫倶楽部 | 梅月冨本人形園(常滑) |
|---|---|---|
| 白 | 開運招福・家内安全 | 来福招福 |
| 黒 | 厄除開運 | 厄除招福 |
| 赤 | 健康長寿 | 健康招福 |
| ピンク(桜) | 恋愛成就 | 恋愛招福 |
| 金 | 金運満足 | 金運招福 |
| 黄 | 記載なし | 良縁招福 |
| 緑 | 記載なし | 合格招福 |
| 青 | 記載なし | 安全招福 |
表を見ると、白・黒・赤・ピンク・金の5色は、言葉の違いこそあれ同じ願いを指しています。
日本招猫倶楽部は、白を総合的な「開運招福」の色とし、ほかの色にはそれぞれの御利益を当てています。そのため、願いが一つに決まっているなら色で選ぶという考え方が成り立ちます。
白と金の招き猫の詳しい背景は、各色の記事にまとめています。
作り手によって意味が分かれる色
黄・緑・青の意味を公式に示しているのは、梅月冨本人形園だけです。同園は黄を良縁、緑を合格、青を安全の色としています。
一方で、ほかのメディアでは、黄を金運や学業、緑を健康の色とする説明も見かけます。これらは色の印象をもとに語られている意味で、今回確かめた公式2か所には同じ記述がありませんでした。
研究所はこの3色について、黄を人望招福、緑を健康長寿、青を学業向上と定義しています。いずれも公式の説明とは異なる、研究所としての定義です。
黄・緑・青の招き猫を迎えるなら、その作り手がどんな意味を込めたかを確かめてください。手や持ち物を含めた招き猫の意味と、柄や産地による種類の違いは、次の記事で比べています。
赤い招き猫が選ばれてきた背景
赤が病よけや健康の色とされる背景には、江戸の人々が赤を病除けの色と信じてきた歴史があります。招き猫の首輪が赤いことにも、江戸の絵の約束事が関わっているという見立てもあるのです。
江戸の疱瘡除けと赤い縁起物
赤は、昔から病を遠ざける色と考えられてきました。群馬県立歴史博物館によると、赤には魔除けのほか、疱瘡(ほうそう:天然痘)などの疫病を除ける力が信じられていたそうです。
疱瘡を避けるまじないとして、赤で刷った錦絵の疱瘡絵を家に貼る風習も江戸時代にありました。赤い郷土玩具が、やがて子どもの成長を願う縁起物になったことにも、同館の展示は触れていました。
浮世絵を研究する大久保範子氏は研究所の取材で、疱瘡を広める疱瘡神は赤が苦手だと伝えられていたと話しています。そのため江戸から伝わる子どものおもちゃや縁起物には赤いものが多く、だるまもその一つだといいます。
とはいえ、赤い招き猫そのものを疱瘡除けとしてつくったという記録は、今回の調査では確認できませんでした。つまり、赤い招き猫に病よけや健康の願いを重ねる見方は、江戸の赤の感覚と重なるものの、直接の由来とまでは言い切れません。
研究所が赤を病よけと定義したのは、この疱瘡除けの歴史を根拠にしたものです。
ほかの縁起物と比べると、だるまは赤が基本の色で、招き猫は白と三毛が基本の色です。招き猫にとって赤は、病を遠ざける願いを託すために選ぶ色といえるでしょう。
だるまや熊手と並べたときの招き猫の特徴は、縁起物としての招き猫をまとめた記事で扱っています。
大分・臼杵の福良天満宮では、今も「招福の赤猫」が授けられています。
招き猫の赤い首輪
招き猫の首輪がほぼ赤いのは、唐猫の紐を描いた絵の伝統によるという見立てがあります。研究所の取材で、浮世絵研究者の大久保氏から聞いた見方です。
平安時代、中国から渡った唐猫(からねこ)は珍しく、貴族が紐をつけて飼っていました。源氏物語の女三宮(おんなさんのみや)の猫の場面は、この唐猫の紐が物語を動かす場面として知られています。
物語の文章には紐の色の記述がありません。しかし鎌倉時代以降にこの場面を絵にしたものでは、紐がほとんど赤で描かれているそうです。
やがて江戸時代になり、平安の宮廷を描く絵が数多く描かれると、飼い猫に赤い紐を描くことが約束事として広まりました。大久保氏は、この流れが招き猫の赤い首輪にもつながっていると見ています。
一方で、中国で描かれた猫の絵には紐が見られないといいます。赤い首輪は、日本の絵の中で育った招き猫の細部の意味といえるでしょう。
浮世絵の猫や江戸の縁起物について、大久保氏の話はインタビュー記事にまとめています。
首輪の赤のように、招き猫の細部には長い時間をかけて受け継がれた形が残っているのです。招き猫研究所を運営するのは株式会社日本招き猫総合研究所で、その形を今の職人の手で仕上げるブランドも手がけています。
それが「Luxen Maneki」で、瀬戸焼の伝統窯で職人が一点ずつ手描きで仕上げる招き猫です。
よくある質問
Q. 赤以外に健康の意味をもつ色はありますか?
A. 今回確かめた公式2か所で、健康の意味を当てている色は赤だけです。梅月冨本人形園は、緑を合格の色としています。一方で研究所の定義では、赤を病よけ、緑を健康長寿の色として分けて定義しました。
Q. 赤い招き猫は右手と左手のどちらを選べばよいですか?
A. 公式の説明では、右手で招くのはお金、左手で招くのは人だとされています。赤に託す病よけの願いに、金運を重ねたいなら右手、人の縁や客を重ねたいなら左手というように選ぶとよいでしょう。色と手の意味は別々に考えて組み合わせられます。
Q. 赤い招き猫はどこに飾ればよいですか?
A. 日本招猫倶楽部は、招き猫の飾り方に決まりはないとしています。昔は少し高い場所に安置し、水などを供えたこともあったそうです。健康を願う家族がいつも目にする場所など、願いに合わせて身近な場所を選ぶとよいでしょう。
招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」
赤の意味や首輪の由来を知ると、招き猫がどこで誰の手によってつくられたかにも目が向くのではないでしょうか。ただ、店先に並ぶ招き猫だけでは、作り手の仕事までは見えにくいものです。
瀬戸焼は六古窯のひとつで、Luxen Manekiはこの産地の職人が仕上げる、招き猫研究所の招き猫です。金彩は一点ずつ手描きで施し、受注生産のため、注文から約4〜6週間でお届けしています。
届けるときは特製の桐箱に納めます。湿気を吸ったり吐いたりして中を守り、燃えにくい桐は、昔は金庫の内箱にも使われた木です。
まとめ
赤い招き猫は、研究所の定義では病よけの色です。公式2か所は健康の色と紹介しており、研究所は健康長寿を緑に分けて定義しました。厄除けを当てているのは黒なので、赤とは分けて考えるとよいでしょう。
色ごとの意味は、白・黒・赤・ピンク・金の5色で公式の説明がほぼ一致します。一方で黄・緑・青の意味は作り手ごとに異なるため、選ぶときは作り手の説明を確かめましょう。
研究所が赤を病よけとした背景には、江戸の人々が赤に疱瘡除けの力を信じてきた歴史があります。意味の由来まで知ったうえで、家族の健康を願う一体を選んでみてください。









