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招き猫の選び方

招き猫の前掛けの意味は?鈴や首輪に込める願いと由来を解説

この記事でわかること

  • 前掛け・鈴・首輪の意味は、研究所の定義で読み取れる
  • 鈴は古くから魔除けと神を招く音とされてきた
  • 赤い首輪は唐猫の紐を描く絵の伝統という見立てがある
  • 前垂れは江戸の町で働く人に広く使われた装いだった

招き猫の前掛けや鈴、首輪には、招き猫研究所が定める願いを読み取ることができます。研究所の定義では、鈴は招福・魔除け、首輪は縁をつなぐ装い、前掛けは千客万来を表します。

店先の招き猫が、なぜ首に鈴を下げ、胸に前掛けを着けているのか、気になったことはないでしょうか。装いの意味は作り手によって説明がまちまちなため、研究所では定義を決めて示すことにしました。

あわせて、鈴・首輪・前垂れそのものが日本の暮らしで担ってきた役割を、辞典や研究者への取材で確かめています。2026年10月17日時点で出典をたどれる事実だけを、意味とは分けて整理しました。

招き猫の前掛け・鈴・首輪の意味【早見表】

歌川国芳「鼠よけの猫」。赤い首輪に鈴をつけた猫が上を見上げる錦絵
歌川国芳「鼠よけの猫」江戸時代・19世紀(東京国立博物館蔵)/出典:ColBase

招き猫の前掛け・鈴・首輪は、そろって一体の願いを形づくる装いです。まず研究所の定義を確かめ、そのうえで色や小判と組み合わせた読み方を押さえましょう。

前掛け・鈴・首輪の意味の要点

  • 研究所の定義では、鈴は招福・魔除け、首輪は縁をつなぐ装い
  • 前掛けは、多くの客を迎え入れる千客万来の装いと定義している
  • 抱える小判は、お金の巡りを招く金運の持ち物と定義している
  • 首輪や鈴の色は、研究所の色の定義と重ねて読み取れる

招き猫研究所が定義する前掛け・鈴・首輪・小判の意味

招き猫研究所では、鈴・首輪・前掛けと小判の意味を研究所の価値基準として定めています。招き猫が身につける装いと抱える持ち物に込める願いを、次のように定義しました。

招き猫研究所が定義する前掛け・鈴・首輪・小判の意味

持ち物・装い招き猫研究所の定義研究所の考え方
鈴招福・魔除け(福を呼び寄せ、悪いものを遠ざける)古くから邪気を払い神を招く音とされてきた鈴は、澄んだ音で福を呼び寄せ、悪いものを遠ざける合図
首輪縁をつなぐ(迎えた家や人との縁が長く続く)大切に飼われている猫のしるしである首輪は、迎えた家や人と招き猫を結び、そのご縁が長く続くことを願う装い
前掛け(前垂れ・よだれかけ)千客万来(多くの客を迎え入れる)働く人の装いでもある前掛けは、店先で客を迎える招き猫の働きぶりを表し、多くの人が訪れることを願う装い
小判金運(お金の巡りを招く)江戸時代の金貨である小判は、お金の巡りと商いの実りを、招き猫が胸に抱えて目に見える形にした持ち物

研究所の定義では、鈴は福を呼び寄せる合図であり、同時に悪いものを遠ざける音でもあります。首輪は迎えた家と招き猫を結ぶしるしで、前掛けは店先で客を迎える働きぶりを表す装いです。

小判は、お金の巡りを招く願いを抱えた持ち物と位置づけています。

つまり、上げた手で「何を招くか」が決まった招き猫に、装いが「どう福を迎えるか」を添えていると研究所では考えます。この定義は研究所の価値基準であり、効果を約束するものではありません。

色と小判を合わせた装いの読み方

装いの意味は、首輪や鈴の色と重ねると、より具体的に読めるようになります。研究所の色の定義では、赤は病よけ、金は金運・仕事運を表す色です。

たとえば赤い首輪なら、縁をつなぐ首輪の意味に、病を遠ざける赤の願いが重なります。金色の鈴であれば、福を呼ぶ鈴の音に、お金の巡りと仕事の実りを願う金の意味を添えて読めるでしょう。

小判に書かれた「千万両」などの文字は、別の記事で詳しく扱っています。豪徳寺の招福猫児のように、小判を持たない招き猫の考え方も同じ記事で紹介しました。

そのため装いを読むときは、手・色・小判・装いの順に見ていくと、一体の招き猫に込められた願いを整理しやすくなります。

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招き猫の前掛けの由来(前垂れ・よだれかけ)

招き猫の前掛けは、江戸の町で働く人が広く着けた前垂れと同じ名で呼ばれる装いです。前垂れが暮らしの中でどう使われていたかを知ると、店先の招き猫の姿がいっそう身近に感じられます。

前掛けの由来の要点

  • 前掛けは江戸中期以降の呼び名で、それより前は前垂れと呼ばれた
  • 江戸では茶屋で働く女性などが、木綿の赤前垂れを着けて働いた
  • 瀬戸系の招き猫には、前掛けのひだ飾りまで作り込む型がある

江戸の町に広まった前垂れ

前掛けは、衣服の汚れを防ぐために体の前を覆う衣料です。改訂新版 世界大百科事典によると、前掛けは江戸時代中期以降の呼び名で、それ以前は前垂れと呼ばれていました。

江戸の書物『飛鳥川』は、「前垂れせぬ者はなし」とまで記しました。世界大百科事典によれば、茶屋の女性や下女、農婦などは、たすきをかけ木綿の赤前垂れを着けて仕事をしたそうです。

さらに『守貞漫稿』には、町の男女が普段から前垂れを用いていたことが記されています。同書には二幅の前垂れや胸当てつきの前垂れなど、江戸の男性の前垂れも図で残されました。

つまり前垂れは、商いや家の仕事に携わる人の毎日の身なりだったといえます。招き猫の前掛けを眺めるときも、店先で客を迎える人の姿と重ねると、装いの印象がつかみやすいでしょう。

瀬戸系に見る前掛けの作り込み

招き猫の前掛けは、産地の型によって表し方の細かさが変わる装いです。愛知県の公式観光サイトは、前掛けのフリルのような細部まで表せる点を、瀬戸系の持ち味として挙げています。

瀬戸焼(愛知県瀬戸市)の瀬戸系は磁器で、表現の幅が広いため、ポーズや姿に決まった形がないとされます。これに対して常滑焼(愛知県常滑市)の常滑系は、丸い顔と大きな耳を持つ陶器の招き猫です。

同じサイトは、常滑系がしっかりつかんだ大きな小判で商売繁盛を表していると説明しています。つまり、前掛けのひだまで作り込むか、小判を大きく見せるかで、産地ごとに装いの見せ場が異なります。

招き猫を見比べるときは、前掛けの表し方にも目を向けてみてください。型の違いを見分ける手がかりになるはずです。

瀬戸系の招き猫が生まれた背景や、いまの瀬戸で招き猫に出会える場所は、瀬戸焼の記事にまとめました。

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地蔵のよだれかけとの違い

胸元に布を掛けた姿は、道ばたの地蔵に掛けるよだれかけにも見られます。ただし地蔵のよだれかけは、願掛けや加護を受けるために、人びとが奉納してきたものです。

レファレンス協同データベースには、北九州市立中央図書館の回答が載っています。そこでは、『地蔵の世界』の奉納物の一覧に涎掛けが入っていると紹介されました。

地蔵は子どもを守る仏として信仰されてきました。赤いよだれかけには、子が丈夫に育つよう願う母親の祈りが込められているとする本もあります。

これに対して招き猫の前掛けは、作り手が置物の形として最初から作り込む装いです。だからこそ、祈る人があとから掛ける布と、招き猫が身につけた装いとは、分けて考えると整理しやすいでしょう。

あわせて岡崎市立中央図書館は、地蔵が首から掛ける布の名前を尋ねる質問に答えています。辞典類には「よだれかけ」と記されているとの回答でした。呼び名が似ていても、地蔵の布と招き猫の前掛けは成り立ちの異なるものです。

招き猫の鈴の由来

鳥居清満「美人と猫」。座敷の女性と足元の猫を描いた錦絵
鳥居清満「美人と猫」江戸時代・18世紀(東京国立博物館蔵)/出典:ColBase

鈴は、悪いものを払い、神を招く音として古くから使われてきた道具です。招き猫の首に下がる鈴にも、こうした鈴の役目を重ねて見ることができます。

鈴の由来の要点

  • 鈴の音には、悪いものを払う力があると信じられてきた
  • 神社の拝殿の鈴は、邪気を払い神を招くものとされる
  • 『古事記』には、飼っている動物に鈴を付けた記述がある

魔除けと神を招く音

日本大百科全書によると、鈴を打ち鳴らせば悪魔を払う力があると信じられてきました。神事の祭具に使われたのが起こりとみられ、やがて清らかな音を伴う魔除けの装身具にも広がったといいます。

あわせて改訂新版 世界大百科事典は、拝殿や神楽で使う鈴を、神霊を招き邪悪を払うものと説明しています。精選版 日本国語大辞典も、拝殿の鈴などに、邪気を払い神を招く役割を担わせたと記しました。

鈴の歴史は長く、日本では縄文時代の土製の鈴が見られ、青銅の鈴は古墳時代以降に作られました。一方で土鈴(どれい:土を焼いて作る鈴)は、江戸時代初期に京都の伏見人形の一つとして作られたのが始まりとされます。

いまも土鈴は各地の神社で授与され、郷土玩具の中でも独自の位置を占めています。つまり鈴は、祈りの場で鳴らされてきた音具であり、縁起物とも深く結びついてきた道具です。

動物の首に鈴を付ける習わし

鈴を動物に付ける習わしは、日本でも古くから記録されています。日本大百科全書によると、『古事記』には、犬や鷹など飼っている動物に鈴を付けたことがすでに記されています。

また岩手県滝沢市の「ちゃぐちゃぐ馬こ」は、飼い馬の安泰を祈って参詣する祭礼です。同じ事典によれば、祭りの名は南部馬の首を飾る鈴の音に由来します。

世界大百科事典も、牛や馬などに付ける鈴には、居場所を知らせると同時に害獣から守る意味があったと説明しています。動物の首の鈴は、飾りであると同時に、身を守るための音でもありました。

さらに猫と鈴の組み合わせは、ことわざにもなっています。「猫の首に鈴を付ける」は、イソップの寓話から生まれた言葉です。鼠たちが猫に鈴を付ける相談をしたものの、実行する者はいなかったという話がもとになっています。

デジタル大辞泉でも、鈴の項の用例に「猫の首に鈴をつける」が挙げられています。だからこそ、首に鈴を下げた招き猫の姿は、多くの人にとって見慣れた猫の姿といえるでしょう。

招き猫の首輪の由来

招き猫の首輪には、平安時代の唐猫をつないだ紐にさかのぼるという見立てがあります。猫を紐でつないだ記録と、絵の中で赤い首輪が受け継がれた流れの両面から、その背景を確かめられます。

首輪の由来の要点

  • 『源氏物語』には、猫が綱につながれている様子が描かれる
  • 鎌倉時代以降の絵では、唐猫の紐がほぼ赤く描かれてきた
  • 江戸の浮世絵でも、室内の飼い猫には赤い首輪が描かれている

源氏物語の唐猫をつないだ綱

首輪は、犬や猫の首にはめる輪とデジタル大辞泉が説明する、飼われる動物の装いです。世界大百科事典によると、古代エジプトには首輪を着けたネコの絵が残っています。

日本でも平安時代には、『枕草子』に宮中の飼い猫のことが見えるように、猫は上流社会で飼われていました。さらに『源氏物語』若菜下には、猫が綱につながれている様子も描かれていると同じ事典は伝えています。

その猫は唐猫(からねこ:中国から渡ってきた猫)でした。数が少なく珍しかったため、貴族しか飼えなかったと浮世絵研究者の大久保範子氏は研究所の取材で語っています。

美術史学者の山本陽子氏も、唐猫について研究所の取材に「野放しにされず、紐で繋がれて大事にされていました」と語っています。山本氏によると、猫が紐で繋がれなくなったのは、慶長7年(1602年)の「猫放し飼い令」以後のことです。紐は、珍しく高価な猫を大切に手元に置くためのものだったといえます。

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つまり首輪の起点は、大切な猫を手元にとどめておくための紐にあったと読めます。いまの招き猫の首輪も、飼い猫として大事にされてきた猫の姿を写したものと見ることができるでしょう。

江戸の絵に受け継がれた赤い首輪

招き猫の首輪がほぼ赤いのは、絵の中で受け継がれた約束ごとによるという見立てがあります。大久保氏によれば、『源氏物語』の本文に紐の色はなく、それでも鎌倉時代以降の絵では唐猫の紐がほぼ赤く描かれてきました。

その後、江戸時代に王朝の物語を題材にした絵が数多く生まれると、猫に赤い紐を描く定型がさらに広まったといいます。猫好きで知られる歌川国芳の作品でも、室内で飼われる猫にはほぼ赤い首輪が付いていると大久保氏は話しています。

一方で、中国で描かれた猫の絵には、紐が見られないそうです。そのため赤い首輪は、日本の絵の伝統の中で育った装いと見ることができます。

なお、研究所の色の定義で赤は病よけの色です。招き猫の赤い首輪には、縁をつなぐ首輪の意味に、身を守る赤の願いを重ねて読み取ることもできるのではないでしょうか。

唐猫と源氏物語の場面や、江戸で赤が縁起の色とされた背景は、大久保氏のインタビュー記事で詳しく読めます。

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よくある質問

Q. お守りに鈴がついている意味は何ですか?

A. 鈴は、清らかな音で悪いものを払う魔除けの道具とされてきました。世界大百科事典は、日本で子どもの衣服や財布などに鈴を付ける習慣を紹介しています。もとは魔除けの意味があったとみられます。お守りそのものの意味や扱いは、授与する寺社の説明に従ってください。

Q. 招き猫は縁起が悪いといわれることがありますか?

A. イミダスの時事用語事典によると、両手を上げた招き猫は「お手上げ」を連想させ、縁起が悪いとされてきました。同じ項目は、両手なら開運の力が倍になるという説にも触れています。どちらも言い伝えなので、受け止め方は人それぞれでしょう。

Q. 招き猫の有名なご利益は何ですか?

A. 日本招猫倶楽部によると、一般に右手を上げた招き猫は「お金」を招くといわれます。左手を上げた招き猫は「人やお客」を招くとされています。デジタル大辞泉も、顧客や財宝を招く縁起から客商売の家で飾る置物と説明しました。ただし左右の意味づけは、寺社によって異なる例もあります。

招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」

招き猫に託す願いは、首輪や鈴、前掛けといった身につける物だけに表れるわけではありません。体に描かれた文様に願いを読み取るのも、招き猫を眺める楽しみの一つです。

招き猫研究所を運営する株式会社日本招き猫総合研究所は、招き猫ブランド「Luxen Maneki」を手がけています。白の花筏には桃山から江戸の吉祥文様を、金の錦鯉には江戸後期の吉祥文様をあしらいました。黒の浮世には、浮世絵の趣で瑞雲を描いています。

いずれも六古窯に数えられる瀬戸焼の窯で、職人が金彩を一体ずつ手描きしています。ご注文を受けてから作り始めるため、お届けまでは約4〜6週間を見込んでください。

まとめ

招き猫の前掛け・鈴・首輪は、研究所の定義では千客万来・招福と魔除け・縁をつなぐ装いです。上げた手で何を招くかを決めた招き猫に、装いが福の迎え方を添えていると研究所では考えています。

由来の面では、鈴は魔除けと神を招く音として古くから使われ、前垂れは江戸の町で働く人に広まった装いでした。赤い首輪には、唐猫の紐から江戸の絵へ受け継がれた約束ごとがあるという見立てもあります。

招き猫を選ぶときは、手と色に加えて、首輪・鈴・前掛けの形や色にも目を向けてみてください。装いの意味を知ったうえで、自分の願いに合う一体を迎えましょう。