この記事でわかること
- 招き猫を奉納する寺社は徳島のお松大権現
- 岡山と尾道には、招き猫を集めた美術館がある
- 木山神社の看板猫は、招き猫ではない猫の縁
- 2月の猫の日前後は、行事が重なる回りどき
中国・四国で招き猫にまつわる寺社や施設を訪ねるなら、徳島のお松大権現と、岡山・尾道の2つの招き猫美術館が軸になります。お松大権現は招き猫を借りて返すならわしの神社で、美術館は全国の招き猫を見比べられる場所です。
一方で岡山県真庭市の木山神社には、参拝者を迎える看板猫がいます。尾道市因島の大山神社では、猫のご祈願を受けられます。
研究所は2026年10月21日に、寺社・施設・自治体・観光協会の公式の案内を確かめ、5か所を県別にまとめました。後半では、季節の行事から回る順番を決める方法も整理しました。
中国・四国の招き猫の神社・寺の早見表

中国・四国で訪ねられる場所は、招き猫を奉納する神社、招き猫を見る美術館、猫に会う神社の3つに分かれます。この記事では、山陽と四国にある5か所を、県と目的ごとに整理しました。
県別に見る中国・四国の5か所
取り上げるのは、徳島・岡山・広島の3県にある5か所です。このうち招き猫そのものが主役になる場所は、お松大権現と2つの美術館に限られるでしょう。
中国・四国の招き猫・猫ゆかりの寺社と施設(2026年10月時点)
| 県 | 場所 | 猫とのかかわり | 種類 |
|---|---|---|---|
| 徳島県(阿南市) | お松大権現 | 招き猫を借り、願いがかなうと2体にして返す。境内に約1万体 | 奉納する |
| 岡山県(岡山市北区) | 招き猫美術館 | 明治の招き猫から館のオリジナルまで約800点を常設 | 見る |
| 広島県(尾道市) | 招き猫美術館in尾道・猫の細道 | 古民家に約3,000体の招き猫、路地に福石猫 | 見る・歩く |
| 岡山県(真庭市) | 木山神社 | 看板猫のテンちゃんと、猫を描いた御朱印帳・御守 | 招き猫ではない |
| 広島県(尾道市因島) | 大山神社 | 猫の健康を願うご祈願と、2月の「にゃんこ祭」 | 招き猫ではない |
表のとおり、神社で招き猫が奉納されているのは徳島のお松大権現です。対して岡山と尾道の美術館は、館が各地から集めた招き猫を並べて見せる施設にあたり、神社の授与や奉納とは役目が違います。
ただし木山神社と大山神社は、置物の招き猫ではなく、生きている猫や猫の健康にかかわる神社でしょう。そのため訪ねる目的を、招き猫に願うのか、猫そのものに会うのかで分けておくと迷いません。
奉納する・見る・会いに行くの違い
中国・四国の5か所は、猫に何を託す場所かで性格がはっきり分かれます。お松大権現では、招き猫が願いを預かる器として、借りては返されてきました。
中国・四国の猫ゆかりの場所の違い
| 比べる点 | お松大権現 | 2つの招き猫美術館 | 木山神社・大山神社 |
|---|---|---|---|
| 猫の役目 | 願いを預かり、かなうと倍になって戻る | 時代や産地の違いを見せる | 参拝者を迎える・家族の猫の健康を願う |
| 形 | 社殿や回廊に並ぶ招き猫 | 和紙・木・やきもの・石など | 境内の看板猫、猫を描いた授与品 |
| もとになった話 | 江戸時代のお松と愛猫の伝説 | 館の収集と展示 | 神社で暮らす猫、島の暮らしと猫 |
猫は人の家と外を行き来するため、福と魔の二つの顔を持つ動物と見られてきました。民俗学者の飯倉義之氏が、研究所のインタビューで示した見方です。経典をネズミから守る福の顔と、化け猫として語られる顔がそれにあたります。
つまりお松大権現は、化け猫の伝説と招き猫のならわしが同じ境内に重なる場所といえます。目を描き入れて願をかけるだるまと比べると、招き猫は猫の手招きという仕草そのものに福を託してきた縁起物でした。
猫が化ける理由や、福を招く顔との関係は、飯倉氏へのインタビューで掘り下げました。
徳島・お松大権現は招き猫を借りて返す神社
徳島県阿南市のお松大権現は、参拝者の奉納で招き猫が約1万体に増えた「猫神さん」です。合格や必勝の祈願で知られ、参拝者が招き猫を借りては返すならわしが続いています。
約1万体の招き猫と「勧請」のならわし
お松大権現の招き猫は、参拝者が借りて返すことで増えてきたものです。神社によると、境内には約1万体が並び、古瀬戸と伝わる約400体は神庫に納められています。
このならわしを、神社は「勧請(かんじょう:神仏の来臨を請うこと)」と呼びます。社殿の招き猫を借りて家でまつり、願いがかなうか1年が過ぎたら、もう1体を受けて2体で返す形です。
一方で由緒は、江戸時代の加茂村の庄屋の妻、お松の話にさかのぼります。お松は不正を訴えて処刑され、愛猫の三毛がその無念を晴らしたと伝わりました。
飯倉氏の説明では、江戸の歌舞伎で流行した化け猫は「半分は幽霊」の存在でした。お家騒動で命を落とした飼い主に代わり、猫が化けて恨みを返す筋書きです。お松の三毛も、その型に重なる猫として語られてきたのでしょう。
お松大権現の参拝の案内(2026年10月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 徳島県阿南市加茂町不け63 |
| 参拝時間 | 9時〜17時 |
| 祭典 | 5月1日 命日祭 |
| バス | JR阿南駅から加茂谷行きの阿南バスで約40分、「お松権現前」下車 |
| 車 | 徳島ICから約50分(駐車場20台・無料) |
出典:お松大権現「アクセス」
出典:お松大権現「ご利益・ご祭神」
境内のさすり猫や猫の大佛、伝説のくわしい筋は、お松大権現の記事にまとめました。初めて訪ねる人は、勧請の流れを先に知っておくと参拝の手順に迷いません。
岡山・金山寺の招き猫美術館

岡山市北区金山寺の招き猫美術館は、明治時代の品を含む約800点の招き猫を常設する美術館です。素材も表情も違う招き猫を、山あいの館で見比べられます。
約800点の招き猫と絵付け体験
招き猫美術館は、招き猫の文化を育て直したいという思いから生まれた館です。館の案内によると、開館は1994年(平成6年)で、天台宗の金山寺の境内から始まりました。
展示は和紙・木・やきもの・石・土・ブリキと素材が幅広く、産地や時代による形の違いを並べて確かめられます。そのため、地元の寺社で授かる招き猫とは違い、全国の招き猫の幅を知る入口になるでしょう。
招き猫美術館の案内(2026年10月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 岡山市北区金山寺865-1 |
| 開館時間 | 10時〜17時(入館は16時30分まで) |
| 休館日 | 年中無休(館の案内) |
| 入館料 | 一般600円、小・中学生300円 |
| 絵付け体験 | 1,700円(入館料は別) |
| 行き方 | JR岡山駅からタクシーで約20分、山陽IC・岡山ICから車で約20分 |
出典:招き猫美術館「ご利用案内」
出典:招き猫美術館「アクセス」
出典:岡山市「招き猫美術館」
なお、岡山市の案内には休館日を水曜日とする記載が残っています。館は年中無休と案内しているため、遠方から訪ねる日は電話で確かめると安心です。
館の歩みや展示の見方、駅からの行き方は、招き猫美術館の記事で詳しく紹介しました。
素材や産地の違う招き猫を見比べたあとは、家に迎える一体も作られた土地で選んでみたくなるかもしれません。招き猫研究所を運営する株式会社日本招き猫総合研究所は、招き猫のブランド「Luxen Maneki」も手がけています。
焼き物は六古窯に数えられる瀬戸焼で、金彩は一体ごとに伝統窯の職人の手描きです。
尾道の招き猫美術館と猫の細道
広島県尾道市の山手には、古民家の招き猫美術館と、福石猫が置かれた「猫の細道」があります。どちらも芸術家の園山春二氏が手がける「尾道イーハトーヴ」の一部です。
約3,000体が並ぶ招き猫美術館in尾道
招き猫美術館in尾道は、大正時代の民家を改修した小さな美術館です。尾道市の日本遺産の案内では、全国から集めた約3,000体の招き猫を展示し、江戸時代の珍しいものもあると紹介されています。
館を運営する尾道イーハトーヴによると、収集の中心は舶来の品や珍しい招き猫です。館内には、猫の細道に置かれた福石猫の特設コーナーも設けられています。
ただし開館日は決まっておらず、尾道観光協会の案内では予約制です。そのため、出かける前に電話で開館を確かめるのが確実でしょう。
招き猫美術館in尾道の案内(2026年10月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 広島県尾道市東土堂町(猫の細道沿い) |
| 開館 | 不定期・予約制(観光協会の案内では11時〜16時、木曜休み) |
| 入館料 | 中学生以上300円、小学生100円 |
| 予約 | 090-7122-2960 |
| 行き方 | JR尾道駅から徒歩約20分、ロープウェイ山麓駅から徒歩約5分 |
出典:尾道イーハトーヴ「古民家-Chateau-」
出典:尾道観光協会 おのなび「尾道イーハトーヴ・招き猫美術館in尾道」
福石猫が置かれた猫の細道
猫の細道は、尾道の古社、艮神社(うしとらじんじゃ)の横から入る約200mの路地です。尾道市によると、園山氏が1998年から福石猫を置きはじめたことで、この呼び名が広まりました。
福石猫は、丸い石に猫を描いた作品です。尾道イーハトーヴは、尾道の各所に1,000匹を超える福石猫がいると紹介しています。
路地沿いの古民家には、福石猫神社と名づけた一棟もあります。ただし福石猫は手招きの置物ではなく、石に描かれた猫のアートと考えるとわかりやすいでしょう。
一方で、この路地を行き来する猫のほとんどは、住民が見守る地域猫だといいます。尾道イーハトーヴは、猫を追いかけたり触れたりせず、離れて見守るよう求めています。路地は住む人の生活の場なので、静かに歩きましょう。
招き猫ではない中国・四国の猫の信仰

中国・四国には、置物の招き猫とは別に、神社で暮らす猫や家族の猫の健康を大切にする社もあります。いずれも置物の招き猫とは別の話なので、奉納や展示の場所とは切り分けて取り上げましょう。
木山神社(真庭市)の看板猫
岡山県真庭市の木山神社には、授与所のカウンターで参拝者を迎える看板猫「テンちゃん」がいます。神社は生きた猫を「招き猫」とも呼んでいますが、手招きの置物とは別の存在です。
木山神社は、弘仁年間(810〜824年)の創建と伝わる古社です。神社によると、明治の神仏分離までは木山寺とともに山上にまつられ、戦後に山麓の今の場所へ移りました。
神社の紹介では、テンちゃんは2018年生まれの雄猫で、先代の看板猫クックさんの跡を継ぎました。昼休みや昼寝をはさみながら接客し、出勤日は公式のXで知らせています。
木山神社の猫にちなむ授与品と案内(2026年10月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 招き猫御朱印帳 | 初穂料2,500円(記帳込み) |
| テンちゃんの御守 | 初穂料700円 |
| 御朱印の受付 | 16時まで(昼の時間は控えるよう案内) |
| 所在地 | 岡山県真庭市木山1265-1 |
| 行き方 | 中国自動車道 落合ICから約10分、JR美作落合駅からバスで「木山鳥居前」下車、徒歩約20分 |
出典:木山神社「お守り・お札」
出典:木山神社「祈祷と御朱印の受付時間について」(2026年1月18日)
出典:木山神社「アクセス」
つまり木山神社は、招き猫を授かる神社ではなく、猫に会いに行く神社です。会いたい人は、神社の発信で出勤日を確かめてから向かいましょう。
大山神社(尾道市因島)の猫のご祈願
尾道市因島の大山神社は、家族の一員になった犬や猫の無病息災を祈る神社です。2月には猫のための「にゃんこ祭」が開かれ、茅の輪くぐりがおこなわれます。
神社によると、因島の漁師町では、猫は船の食料をネズミから守る存在でした。神社はその猫を船猫社(にゃんこさん)としてまつり、令和9年(2027年)に小宮を建てる予定です。
一方で神社自身も、こうした伝承はすべてを史実として断定できないと断っています。猫の神をまつる信仰であって、招き猫の授与とは別の流れと見ておくのがよいでしょう。
大山神社のペットのご祈願(2026年10月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 広島県尾道市因島土生町1424-2 |
| ご祈願 | 事前に予約(電話0845-23-6000または予約フォーム) |
| 参拝の約束 | リードを着けるか、キャリーバッグに入れる |
| 行き方 | 尾道駅・福山駅から高速バスで「宇和部」下車、徒歩5分 |
出典:大山神社「ペットのご祈願」
出典:大山神社「交通案内・お問い合わせ」
予約なしで訪ねると、祈願を受けられない場合があると神社は案内しています。家族の猫と参るなら、日にちを決めてから予約するのが確かな方法です。
中国・四国の招き猫めぐりの回り方
中国・四国の招き猫めぐりは、県をまたぐ移動が長くなるため、目的地を2か所までに絞ると無理がありません。行事のある時期から決めると、予定も立てやすくなります。
季節の行事から決める
日付が決まっているのは、お松大権現の命日祭と、大山神社のにゃんこ祭です。2月22日の猫の日の前後は、岡山の美術館でも催しが開かれてきました。
中国・四国の招き猫めぐりで押さえたい時期(2026年10月時点)
| 時期 | 場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 2月 | 大山神社 | にゃんこ祭・茅の輪くぐり(わんにゃん家族初詣) |
| 2月22日 | 招き猫美術館(岡山) | 猫の日が平日の年に無料開放をおこなってきた |
| 5月1日 | お松大権現 | 命日祭 |
| 10月20日 | 木山神社 | 例祭 |
出典:大山神社「ペットのご祈願」
出典:招き猫美術館「ご利用案内」
出典:お松大権現「ご利益・ご祭神」
出典:木山神社「年間行事」
年によって日程が変わる行事もあるため、出かける月が決まったら各公式の案内を確かめてください。ただし美術館や猫の細道は、行事のない時期でも訪ねられます。
県ごとの組み合わせ方
岡山県内の2か所は、どちらも車で向かうと回りやすい場所です。招き猫美術館は岡山駅から車で約20分、木山神社は中国自動車道の落合ICから約10分にあります。
尾道では、招き猫美術館in尾道と猫の細道が同じ路地に並んでいます。因島の大山神社へは尾道駅から高速バスが出ているので、尾道を起点にした1日にまとめやすいでしょう。
一方で徳島のお松大権現は、四国の東側にあり、山陽の3か所とは離れています。阿南駅からバスで約40分かかるので、四国を旅する日程の中に入れると無理なく訪ねられます。
参拝の作法や授与品の扱いは、寺社ごとの案内に従いましょう。ほかの地方の寺社も候補に入れるなら、全国の招き猫の寺社をまとめた記事から探せます。
中部・北陸にも、招き猫を授かれる猫神社や招き猫おみくじの寺社があります。
よくある質問
Q. 招き猫がたくさんいる神社は中国・四国のどこにありますか?
A. 徳島県阿南市のお松大権現です。神社によると、境内には約1万体の招き猫が並び、古瀬戸と伝わる約400体も神庫に納められています。招き猫を借り、願いがかなうと2体にして返すならわしが、数を増やしてきました。
Q. 岡山の招き猫美術館と尾道の招き猫美術館は同じ施設ですか?
A. 別の施設です。岡山の館は岡山市北区金山寺にあり、年中無休で約800点を常設しています。尾道の館は猫の細道沿いの古民家にあり、約3,000体を集めていますが、開館は不定期の予約制です。
Q. 木山神社のテンちゃんにはいつ会えますか?
A. 木山神社は、テンちゃんの出勤日を公式のXで知らせています。神社の紹介では、授与所で接客しながら昼休みや昼寝の時間もとるため、出かける前に発信を確かめると確実です。授与所では、テンちゃんの御守や招き猫御朱印帳を受けられます。
招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」
中国・四国では、神社に願いを預ける招き猫と、美術館で見比べる招き猫の両方に出会えました。旅を終えたあと、手元で長く眺められる招き猫を一体迎えたいと考えることもあるでしょう。
ただ、旅先で授かる縁起物と家に飾る置物とでは、選ぶときの基準が変わります。株式会社日本招き猫総合研究所のブランド「Luxen Maneki」は、産地と作り方をたどれる瀬戸焼の招き猫です。
一体ずつ受注で仕上げているので、注文からお手元に届くまで約4〜6週間を見てください。お届けの際は、特製の桐箱に納めます。
まとめ
中国・四国で招き猫を奉納する寺社を訪ねるなら、徳島のお松大権現が中心です。約1万体の招き猫が並び、借りて2体で返す勧請のならわしが続いています。
招き猫そのものを見比べたいなら、岡山の招き猫美術館と尾道の招き猫美術館が候補になります。岡山は年中無休、尾道は予約制なので、尾道は電話で開館を確かめてから訪ねましょう。
一方で真庭の木山神社や因島の大山神社は、招き猫ではなく猫そのものにかかわる神社です。奉納する、見比べる、猫に会うのうち、旅の目的に合う場所から予定に入れましょう。




