この記事でわかること
- 英語名はmaneki-nekoと、英訳2つの計3通り
- 図書館の見出しはmaneki neko、ほかの2つは別名にあたる
- 日本の手招きは手のひらが下向きで、手を振る姿と区別して伝える
- 手と色の意味は、常滑の窯元が添えた英語表記が手がかりになる
招き猫の英語には、ローマ字のmaneki-nekoと、2つの英訳があります。英訳はbeckoning catとlucky catです。伝えたい中身によって、3つの呼び方を使い分けると相手に届きやすくなります。
海外の友人や訪日客に、店先の招き猫を英語で説明したい場面もあるでしょう。図書館の典拠記録や辞書、観光庁が外国人向けに整えた英語の解説文を手がかりに、呼び方と伝え方をまとめました。
招き猫の英語での呼び方
招き猫の英語名は、ローマ字の名前と、2つの英訳に分かれます。どれも公的な記録や辞書で使われている呼び方で、意味の置き方が少しずつ違います。
英語での呼び方の要点
- 図書館の見出しはmaneki neko。beckoning catとlucky catは別名として登録されている
- beckoning catは手招きのしぐさを、lucky catは福を招く役目を表す
- 説明するときは、maneki-nekoに英訳を一つ添えると伝わりやすい
3つの呼び方と使い分け
3つの呼び方のうち、見出しとして扱われているのはmaneki nekoです。米国議会図書館の件名標目は「Maneki neko (Talisman)」です。Beckoning catとLucky catは、その別名として登録されました。
招き猫の英語の呼び方
| 呼び方 | 意味 | 使われている例 |
|---|---|---|
| maneki-neko(maneki neko) | 日本語の名前をローマ字で書いたもの | 米国議会図書館・国立国会図書館の典拠、観光庁の英語解説 |
| beckoning cat | 手招きする猫 | 和英辞書(JMdict・EDR日英対訳辞書)、日本政府観光局(JNTO)の英語記事 |
| lucky cat | 幸運をもたらす猫 | 観光庁の英語解説、nippon.comの英語記事 |
国立国会図書館の典拠データも、招き猫の別の表し方として「Maneki neko (Talisman)」を載せています。つまり日米の国立図書館は、ローマ字の名前を軸に招き猫を記録しているのです。
ただし、ローマ字だけでは、初めて聞く人には何のことか伝わりません。そのため会話では、maneki-nekoと言ったあとに英訳を一つ添える形が使いやすいでしょう。
招き猫そのものの定義や、由来と産地の全体像は、総合の記事で確かめられます。
beckoning catの読み方と意味
beckoning catは「ベコニング・キャット」と読み、手招きする猫という意味です。
Cambridge Dictionaryでは、動詞beckonの発音を/ˈbek.ən/としています。beckoningはその現在分詞で、「手招きしている」状態を表しています。
beckonの意味は、手や頭を動かして、相手に近くへ来るよう伝えることです。観光庁の英語解説によれば、maneki nekoは「招く」と「猫」からなる名前です。英語ではbeckoning catと訳されることもあると書かれています。
あわせて、米国議会図書館の典拠記録が引く文献は、手招きのしぐさが招き猫をほかの猫の人形と分ける特徴だと記しています。だからこそ、英訳でもしぐさそのものが名前になったと読めるでしょう。
一方で、だるまは達磨大師の座禅の姿をまねた人形で、人物にちなんで呼ばれてきました。縁起物の名前が人物ではなく動作から来ている点に、招き猫ならではの性格が表れています。
lucky catの意味と使われ方
lucky catは、幸運をもたらす猫という意味の呼び方です。Cambridge Dictionaryは形容詞luckyの意味の一つに「幸運をもたらす」を挙げています。
観光庁の英語解説は、常滑の招き猫を「maneki neko (lucky cats)」と書きました。そのうえで、招き猫を幸運の象徴だと紹介しています。
nippon.comの英語記事によれば、台湾や各地のチャイナタウンでは、招き猫をよくlucky catsと呼ぶそうです。
つまりbeckoning catが姿を表す名前なら、lucky catは役目を表す名前といえるでしょう。しぐさを説明したいときは前者、縁起物だと伝えたいときは後者を選ぶと、意図に合った言い方になります。
チャイナタウンなど、海外で招き猫がどう受け入れられてきたのかについては、別の記事が詳しいです。
招き猫を英語で説明するときの要点
名前を伝えたあとは、手招きのしぐさ、上げた手、色の意味の順に説明すると、招き猫の姿が相手に伝わります。どれも、公的な英語解説や窯元の英語表記に使える言い回しが見つかるでしょう。
手招きのしぐさの伝え方
招き猫の手は、日本式の手招きをかたどったものです。観光庁の英語解説は、日本の手招きを、手のひらを下に向けて指を上下に動かすしぐさだと説明しています。
一方で、日本政府観光局(JNTO)の英語記事は、ほかの多くの国では手招きの向きが日本と違うと書いています。nippon.comの記事でも、英語圏の人には手を振っているように見えるかもしれないと指摘されていました。
そのため英語で説明するときは、名前に加えてしぐさの意味を一言添えるのが安心です。たとえば次のような短い文で、手を振っているのではなく招いていることが伝わります。
- It is beckoning, not waving.
- In Japan, people beckon with the palm facing down.
右手と左手の意味を英語で
上げた手の意味は右手がお金、左手が人を招くとされ、英語でも同じ区別で紹介されています。常滑焼(愛知県常滑市)の窯元・梅月冨本人形園は、自社のページで手の意味に英語を添えました。
招き猫の手の意味(英語表記の例)
| 上げた手 | 梅月冨本人形園の英語表記 | 観光庁の英語解説の書き方 |
|---|---|---|
| 右手 | Right hand raised/Invite money | 幸運と富をもたらす(good fortune and wealth) |
| 左手 | Left hand raised/Invite people | 人を招くとされ、客を呼びたい商売に好まれる |
表のとおり、窯元はinviteという動詞で「招く」を表しています。Invite moneyとInvite peopleの2語なら、英語に慣れていない人にも短く伝えられるでしょう。
ただし、手の意味は時代や作り手によって説明が分かれ、豪徳寺のように独自の教えを伝える寺もあります。だからこそ英語でも、「といわれる」にあたるis said toを添えて伝えるのが誠実です。
左右の意味が生まれた背景と、梅月冨本人形園の招き猫づくりについては、次の記事を読んでみてください。
色の意味を英語で
招き猫の色の意味も、窯元の英語表記を借りると一語で伝えられます。梅月冨本人形園は、常滑焼の招き猫の8色に、それぞれ短い英語を添えました。
梅月冨本人形園による色の意味と英語表記
| 色 | 日本語の表記 | 英語の表記 |
|---|---|---|
| 白 | 来福招福 | Happiness |
| 桜(ピンク) | 恋愛招福 | Love |
| 赤 | 健康招福 | Health |
| 黄 | 良縁招福 | Marriage |
| 黒 | 厄除招福 | Talisman against bad luck |
| 青 | 安全招福 | Safety |
| 金 | 金運招福 | Money |
| 緑 | 合格招福 | To pass exams |
表の英語は、一つの窯元が自社の招き猫に付けた表記です。色の意味は作り手によって言葉が異なり、黄色の意味を載せていない団体もあります。
招き猫研究所も、作り手の説明や博物館の資料を比べて色の意味を定義しました。研究所の定義では、赤は病よけ、緑は健康長寿、青は学業向上、黄は人望招福の色で、この窯元の表記とは一部が異なります。
そのため、英語で色を説明するときは、作り手の説明であることを前置きにしましょう。「この窯元では」と主語を示すと、相手に誤解を与えずに済みます。
作り手ごとに色の意味を比べた一覧と研究所の定義は、意味の記事に載せました。
招き猫を英語で紹介する表現
招き猫を英語で紹介するときは、名前・役目・しぐさの3つを短い文で順に伝えると、初めての人にも全体が伝わります。縁起物という言葉の訳し方も、あわせて押さえておきましょう。
一文で紹介する基本の言い方
最初の一文では、名前と「幸運を招く置物」であることを伝えます。次の文は、観光庁やJNTOの英語解説の言葉づかいを参考に、研究所でまとめた紹介の例です。
- Maneki-neko, or “beckoning cat,” is a Japanese good luck figurine.
- The raised paw is said to beckon people or good fortune.
- Many maneki-neko are made in Tokoname and Seto in Aichi Prefecture.
1文目のor “beckoning cat”は、ローマ字の名前を英訳で言い換える書き方です。観光庁の解説も、名前のあとにかっこで英訳を添える形をとっていました。
2文目のis said toは、手招きの意味が言い伝えであることを示す言い方です。さらに3文目で産地を添えると、どこで作られてきた縁起物かまで伝わります。
つまり3つの文を順に話せば、招き猫を知らない相手にも、名前・役目・ふるさとがひととおり届くはずです。訪日客に招き猫を紹介する場面については、別の記事で取り上げました。
「縁起物」を英語でどう表すか
英語で「縁起物」を表すなら、talismanのような語に説明を添える方法があります。米国議会図書館の件名でも、招き猫の名前に(Talisman)という補足が付いていました。
Cambridge Dictionaryによれば、talismanは幸運をもたらすと信じられている物を指します。持ち主を災いから守る物も含む言葉です。
一方で観光庁の英語解説は、招き猫を幸運の象徴(symbols of good luck)と表しました。
あわせて、愛好家団体の日本招猫倶楽部は、招き猫を「日本生まれの縁起物」と紹介しています。日本が世界に誇れるラッキーゴッドだとも表しました。
そのため英語で話すときは、talismanの一語に頼らず説明を足すとよいでしょう。「日本の商店に置かれてきた幸運の置物」と補う形です。縁起物は、使われてきた場面ごと伝えるほうが相手の理解が深まります。
招き猫がほかの縁起物の中でどんな位置にあるのかは、縁起物の記事で整理しました。
英語で名前と意味を伝えられると、海外の友人へ招き猫を贈りたくなることもあるでしょう。そのとき相手に話せるのが、どこの産地で、誰がどう作った一体なのかという背景です。
「Luxen Maneki」は、招き猫研究所の運営元・株式会社日本招き猫総合研究所によるブランドです。瀬戸焼の窯で、職人が金彩を手描きした招き猫を届けています。
よくある質問
Q. maneki-nekoはハイフンを入れて書きますか?
A. 決まった書き方はありません。JNTOはmaneki-neko、観光庁はmaneki neko、豪徳寺はManekinekoと表記しました。相手が検索しやすいよう、一つの文章の中では同じ書き方にそろえるとよいでしょう。
Q. 招き猫の「招く」はinviteと訳してもよいですか?
A. 訳して差し支えありません。観光庁の英語解説は、manekuを「to invite」の意味の日本語として紹介しています。常滑の梅月冨本人形園も、手の意味をInvite money、Invite peopleと表していました。しぐさを強調したいときはbeckonを使い分けましょう。
Q. 豪徳寺の招き猫は英語でどう紹介されていますか?
A. 豪徳寺の公式英語サイトでは、招き猫はManekinekoと書かれています。招き猫を奉納する招福殿や、三重塔に祀られるManekineko-kannonも英語で案内されています。参拝の前に英語サイトを見ておくと、訪日客に寺を紹介するときの言葉選びに役立つでしょう。
招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」
英語で招き猫を語るなら、名前の意味だけでなく、どこで作られた一体かも伝えたいところです。とはいえ、量産品と工芸品の違いを言葉で説明するのは簡単ではありません。
「Luxen Maneki」は、六古窯の一つである瀬戸焼の招き猫で、研究所の運営会社が手がけています。伝統窯の職人が金彩を手で描き、受注から約4〜6週間をかけて一体ずつ仕上げるのが特徴です。
完成した招き猫は、特製の桐箱に納めて届けています。由来を英語で添えて手渡せる一体として、作り方の背景まで確かめてみてください。
まとめ
招き猫は英語でmaneki-neko、beckoning cat、lucky catと呼ばれます。図書館の見出しはmaneki nekoで、ほかの2つは姿と役目をそれぞれ表す別名です。
説明するときは、ローマ字の名前に英訳を一つ添え、手のひらを下に向けた日本式の手招きであることを伝えましょう。手や色の意味は、窯元の英語表記を借りて「といわれる」の形で話すと、誤解なく伝わります。
まずは「It is beckoning, not waving.」の一文から、身近な招き猫を英語で紹介してみてください。






