この記事でわかること
- 招き猫の種類は柄・産地の型・素材・手と持ち物で分かれる
- 三毛は常滑系の定番の柄で、研究所の定義では開運招福
- 雄の三毛猫を航海の守りとした話は、招き猫とは別の俗信
- 三毛猫がほぼ雌なのは毛色の遺伝子がX染色体にあるため
- 黒猫は厄除けの柄、ハチワレには決まった意味がない
招き猫の種類は、猫の柄・産地の型・素材・手と持ち物の4つの見方で整理すると、違いが見えてきます。なかでも三毛や黒猫といった柄は、本物の猫の毛色が種類の呼び名になったものです。
三毛の招き猫が表す願いは何か、三毛猫はなぜ縁起が良いといわれるのか、気になったことはないでしょうか。招き猫の意味と猫の言い伝えを分けて知れば、店先に並ぶ一体を自分の基準で見比べられます。
辞典や大学の研究成果、公的機関の資料と、研究所の取材をもとに、出典で確かめられる内容だけで整理しました。
招き猫の種類【早見表】

招き猫には、柄も産地も持ち物も異なる品が数多くあります。それでも見る場所を4つに分けておけば、目の前の一体がどんな種類なのかを説明できるようになるでしょう。
招き猫の種類を分ける4つの見方
招き猫の種類は、柄・産地の型・素材・手と持ち物で見分けられます。それぞれの見方について、主な種類と確かめる場所を表にまとめました。
招き猫の種類を分ける4つの見方
| 見方 | 主な種類 | 確かめる場所 |
|---|---|---|
| 猫の柄 | 白・三毛・黒・ハチワレなど | 体の地の色と、ぶちの入り方 |
| 産地の型 | 常滑系・古瀬戸系・今戸焼の丸〆猫など | 頭と体の比率、前垂れや小判の有無 |
| 素材 | 陶器・磁器・土人形・張り子など | 商品や作り手の素材の表示 |
| 手と持ち物 | 右手・左手・両手、小判・打出の小槌など | 上げた手の左右と高さ、抱えている物 |
招き猫の分け方は一つに決まっていませんが、柄と産地の型を押さえれば多くの招き猫の素性が見えてくるはずです。
一方で、手・色・持ち物には、それぞれ伝承の意味が込められてきました。この記事は種類の見分け方を中心にし、意味は要点だけを添えています。
猫の姿が種類を増やしてきた背景
招き猫の種類が多いのは、暮らしの身近にいる猫を写した縁起物だからといえます。ほかの縁起物と並べると、この違いがよくわかるでしょう。
だるまは、達磨大師が座禅を組む姿にならって作られた張り子の人形です。熊手は、落ち葉などをかき集める農具が、酉の市で縁起物になりました。
それに対して招き猫は、どこにでもいる猫の姿が手本です。そのため、三毛・白・黒といった本物の猫の毛色が、種類を呼び分ける名前にもなりました。
あわせて、招き猫は作られる土地を広げながら型を増やしてきました。最も古い作例とされるのは、江戸の今戸焼の丸〆猫です。そこから明治の瀬戸、戦後の常滑へと産地が広がり、土地ごとに新しい型が生まれました。
工芸史研究者の畑中英二氏は研究所の取材で、瀬戸の「日本招き猫100人展」にふれ、「新しいものも受け入れるよっていう、非常に興味深いあり方ですよね。」と語っています。招き猫には「こうでなければ招き猫ではない」という決まりが少なく、余白が大きいという見方です。種類が増え続けてきたのも、この受け入れの広さがあったからでしょう。
猫の姿が縁起物になった言い伝えや、名前の由来にまつわる話は、雑学の記事でまとめて紹介しています。
三毛猫の招き猫の意味と、三毛猫が縁起物とされる理由
招き猫の柄のなかで、研究所が白と並ぶ基本の色に置くのが三毛です。ただし三毛猫という生きた猫には、船乗りの俗信や毛色の遺伝といった、招き猫とは別の話も重なっています。
三毛猫の招き猫の要点
- 三毛は常滑系の招き猫で一般的な柄で、研究所の定義では開運招福
- 雄の三毛猫を船の守りとした言い伝えは、招き猫とは別の猫の俗信
- 三毛猫がほぼ雌なのは、毛色を決める遺伝子がX染色体にあるため
三毛猫の招き猫
三毛は、常滑の招き猫で一般的な柄です。観光庁の多言語解説文は、常滑系の招き猫を、白と黒とオレンジの模様が入った三毛猫として説明しています。
三毛猫とは、白・黒・茶の3色の毛がまじり合った猫を指す言葉です。辞書には、この柄の雄はほとんどいないとも書かれています。
日本国語大辞典は、三毛猫という語の用例に、文化10年(1813年)の歌舞伎「お染久松色読販」の一節を挙げています。つまり、置物の招き猫が現れたとされる19世紀半ばより前から、三毛は暮らしになじんだ猫の呼び名だったのです。
常滑では色とりどりの招き猫が生まれた今も、三毛の置物は根強く選ばれているといいます。三毛は、招き猫と聞いて多くの人が思い浮かべる基本の柄といえるでしょう。
三毛猫の招き猫の意味
三毛の招き猫に託すのは、願いを一つに絞らない「開運招福」です。研究所の定義では、白と三毛は特定の願いに偏らず、どの願いにも向く基本の色です。
研究所は、日本の猫らしい三毛を、何色にも染まる白と同じ基本の色に置きました。そのため三毛の招き猫は、金運や厄除けのように願いを一つに決めず、暮らし全体の福を願って迎える一体になります。
だからこそ、はじめて招き猫を迎えるときにも、三毛は選びやすい柄でしょう。贈り先の人が何を願っているか見当がつかないときも、三毛なら願いを押し付けずに済みます。
三毛猫が縁起が良いとされてきた理由
三毛猫が縁起の良い猫とされてきた背景には、雄の三毛猫を珍重した船乗りの俗信があります。世界大百科事典によれば、雄の三毛猫には天候を予知する力があるとされ、和船の時代には高い値がついたそうです。
日本大百科全書も、舟乗りが三毛の雄猫を大切にし、航海の守り神としてきたと記しています。つまり言い伝えのなかで特別に扱われてきたのは、三毛猫のなかでも雄でした。
一方で、猫は福を運ぶだけでなく、化ける動物としても語られてきました。研究所の取材で民俗学者の飯倉義之氏は、家と外の二つの世界を行き来する動物として猫が見られてきたと語っています。
飯倉氏が紹介した昔話に「猫又屋敷」があります。猫の山の屋敷に泊まった旅人に、旅人の家でかわいがられていた三毛が逃げ道を教える話です。三毛は、人の暮らしのそばにいる猫として昔話にも登場してきたのです。
ただし、こうした猫の俗信や昔話と、招き猫の三毛の意味は成り立ちが異なります。招き猫の三毛は研究所が定める開運招福の柄で、雄の三毛猫にまつわる航海の言い伝えとは分けて受け止めましょう。
猫が福と魔の二つの顔を持つ動物とされてきた背景は、飯倉氏へのインタビューで詳しく紹介しています。
本物の三毛猫や黒猫など、猫の柄にまつわる言い伝えは次の記事で紹介しています。
雄の三毛猫が珍しい理由
三毛猫がほとんど雌なのは、毛色を決める遺伝子がX染色体にあるためです。サビ猫(白がなく黒とオレンジがまじる猫)も同じ理由でほぼ雌です。九州大学は、三毛猫やサビ猫が雌ばかりだという点を120年以上前からの知見として紹介しています。
猫の性染色体は、雌がX染色体を2本、雄がX染色体とY染色体を1本ずつもつ組み合わせです。オレンジか黒かを決める遺伝子はX染色体にあるため、X染色体が1本の雄は、オレンジか黒のどちらか一方の毛色しかもてません。
性染色体と三毛の模様の関係
| 性染色体 | もてる毛色の遺伝子 | 三毛の模様 |
|---|---|---|
| 雌(XX) | オレンジと黒の両方 | 現れる |
| 雄(XY) | オレンジか黒のどちらか | ふつうは現れない |
| 雄(XXY) | オレンジと黒の両方 | まれに現れる |
雌の体では、2本のX染色体のどちらか一方が、細胞ごとにランダムに働かなくなります。そのため、オレンジの毛が生える場所と黒い毛が生える場所がまだらに混ざり、三毛の模様が生まれるのです。
この仕組みは1961年に仮説として唱えられましたが、オレンジの毛色を決める遺伝子の正体は長く不明でした。九州大学などの研究グループは2025年5月、その遺伝子が「ARHGAP36」だと突き止めたと発表しています。
雄の三毛猫が生まれるのは、X染色体を2本もつXXYの雄のように、性染色体の組み合わせがふつうと違う場合です。獣医学の論文は、XXYの雄の猫は繁殖できないとも報告しました。だからこそ、雄の三毛猫はまれな出来事が重ならないと生まれないのです。
白・黒・ハチワレなど猫の柄で見る招き猫の種類

三毛のほかにも、招き猫には白・黒・ハチワレといった柄があります。白は三毛と同じ開運招福、黒は厄除けの柄で、ハチワレは研究所の色の定義に項目がない柄です。
柄で見るときの要点
- 白は三毛と同じ開運招福の柄(研究所の定義)
- 黒は厄除けの柄で、黒猫への見方は国や地域によって違う
- ハチワレは意味より見た目の好みで選べる柄
柄ごとの見分け方と研究所の定義
| 柄 | 見分け方 | 研究所の定義 |
|---|---|---|
| 三毛 | 白地に黒と茶のぶちが入る | 開運招福 |
| 白 | 全身が白い | 開運招福 |
| 黒 | 全身が黒い | 厄除け |
| ハチワレ | 額の模様が鼻筋で左右に分かれる | 定めていない(体の色や手で選ぶ) |
白い招き猫と黒猫の招き猫
研究所の定義では、白は開運招福、黒は厄除けの柄です。白と三毛は同じ意味なので、どちらを選ぶかは見た目の好みで決めてかまいません。
一方で、黒猫への見方は国や地域によって異なります。世界大百科事典は、黒猫が朝に道を横切るのを不幸のしるしとする俗信が、ヨーロッパに伝わってきたと紹介しました。
そのため、黒猫の招き猫を贈るときは、相手の文化になじむかを考えておくと安心です。
白と黒の招き猫それぞれの意味と由来は、色ごとの記事にまとめました。
招き猫研究所が定義する色の意味
柄で迷ったときの物差しとして、研究所は色ごとの意味を一つの表にそろえました。次の表が、招き猫研究所の定める8色の意味です。
| 色 | 招き猫研究所の定義 | 研究所の考え方 |
|---|---|---|
| 白・三毛 | 開運招福(どんな願いにも通じる基本の色) | 何色にも染まる白と、日本の猫らしい三毛は、願いを選ばずに福を招く基本の色 |
| 金 | 金運・仕事運 | 小判や黄金を思わせる金は、お金の巡りと、仕事や商いの実りを招く色 |
| 黒 | 厄除け | 夜の闇にも溶ける黒は、災いを寄せつけず、身と家を守る色 |
| 赤 | 病よけ | 古くから病を遠ざける色とされてきた赤は、病から身を守る色 |
| 緑 | 健康長寿 | 草木や若葉の色である緑は、いのちの勢いとすこやかさを表し、長く元気に過ごす願いを託す色 |
| ピンク | 恋愛成就 | 桜を思わせるやわらかなピンクは、恋心と良い出会いを招く色 |
| 黄 | 人望招福(人に慕われ、人が集まる運。いわゆる人気運) | 明るく人の目を引く黄は、人に慕われ、まわりに人が集まる運を招く色 |
| 青 | 学業向上(集中力・判断力の向上) | 澄んだ空や水を思わせる青は、心を落ち着かせ、学びに向かう集中と判断を支える色 |
表のうち猫の柄にかかわるのは、三毛・白・黒の3つです。三毛と白は願いを限らない色、黒は災いを遠ざける色という位置づけになります。
一方で、黒は夜の闇にも溶ける色として、災いを寄せつけない厄除けの色と定めました。黒猫柄の招き猫は、身と家を守る願いを託す一体といえます。
そのため、柄で迷ったときは、託したい願いに合う色から考えるのも一つの方法です。表の意味は研究所の考え方を示したもので、ご利益を保証するものではありません。
ハチワレの招き猫
ハチワレは、額の模様が鼻筋を境に左右へ分かれた柄です。辞書は犬や猫の模様を指す言葉としてハチワレを載せ、昔は飼うのを嫌う人が多かったとも記しています。
一方で、研究所の色の定義は体の色ごとに意味を定めたもので、ハチワレという柄そのものには意味を当てていません。
つまり、ハチワレは意味より見た目の好みで選んでよい柄です。迎えるときは、上げた手や体の色、持ち物の意味から、込めたい願いを重ねるとよいでしょう。
柄と色の意味がわかると、白や黒の一体をどんな仕上げで迎えるかも気になってくるでしょう。その答えの一つとして、「Luxen Maneki」があります。招き猫研究所を運営する、株式会社日本招き猫総合研究所のブランドです。
白の花筏、黒の浮世、金の錦鯉はいずれも、瀬戸焼の伝統窯の職人が金彩を手で描き入れた一体です。
産地の型と素材で見る招き猫の種類
招き猫の形は、作られた土地で受け継がれてきた型によって大きく変わります。愛知の常滑と瀬戸、江戸の今戸と、型をたどると招き猫の歩みも見えてくるでしょう。
産地の型と素材で見るときの要点
- 常滑系は二頭身で小判を抱え、古瀬戸系は細身で前垂れを着ける
- 今戸焼の丸〆猫は、招き猫の最も古い作例とされる
- 素材は陶器・磁器のほか、土人形や張り子もある
常滑系と古瀬戸系
愛知で量産される招き猫は、常滑系と古瀬戸系の2つの系列に分かれます。
常滑系と古瀬戸系の比較
| 項目 | 常滑系 | 古瀬戸系 |
|---|---|---|
| 姿 | 大きな目と耳をもつ二頭身 | 細身で前垂れを着ける |
| 小判 | 抱えているものが多い | 持たない |
| 主な素材 | 陶器 | 磁器 |
| 始まり | 昭和20年代に今の形ができる | 明治30年代に磁器で量産が始まる |
瀬戸は、明治30年代(1897〜1906年)に国内で最初に磁器の招き猫を量産した土地です。一方で常滑は、昭和20年代に二頭身の形を整え、今では生産高の多い型になりました。
研究所が取材した常滑の梅月冨本人形園は、昭和から大きく変えていない形を守り、モデルチェンジをしないと決めています。型を守り続けることが、常滑系という種類を今に伝えているのです。
常滑と瀬戸の招き猫がどう生まれたのかは、産地ごとの記事で紹介しました。
今戸焼の丸〆猫
常滑系よりさかのぼる型として、江戸の今戸焼の招き猫があります。
今戸焼は、江戸・浅草の今戸で作られてきた土製の招き猫です。日本大百科全書によれば、土製の招き猫はやがて今戸焼の代表的な品になりました。
なかでも丸〆猫(まるしめねこ)は今戸人形の代表的な題材で、招き猫の最も古い作例とされます。あわせて江戸東京博物館も、大正から昭和初期に作られた丸〆猫を収蔵資料として公開していました。
江戸の下町で今戸焼の招き猫が育まれてきた背景は、今戸焼の記事でたどりました。
九谷焼など各地の招き猫
招き猫は、愛知と東京のほかの土地のやきものでも作られています。石川県の九谷焼は伝統的工芸品に指定されたやきもので、主な製品には置物も挙げられています。
九谷焼の持ち味は、緑・黄・赤・紫・紺青の五彩で描く上絵付けです。主な製造地域は、金沢市・小松市・加賀市・能美市とされています。
そのため、九谷焼の招き猫を見るときは、型だけでなく上絵付けの色づかいにも目を向けると、産地の持ち味がわかるでしょう。
九谷焼と、佐賀県の有田焼の招き猫については、それぞれ別の記事にまとめました。
陶器・磁器・土人形・張り子の違い
素材で見ると、招き猫は陶器・磁器・土人形・張り子の4つに大きく分けられます。
素材で見る招き猫の種類
| 素材 | 作り方や特徴 | 主な産地・売られた場 |
|---|---|---|
| 陶器 | 液状の粘土を石膏の型に流して形を作る | 常滑焼(愛知県常滑市) |
| 磁器 | なめらかな肌に仕上がるやきもの | 瀬戸焼(愛知県瀬戸市) |
| 土人形 | 土を材料にして作る人形 | 今戸焼(東京・浅草の今戸) |
| 張り子 | 木型に紙を重ねて張り、乾いたら型を抜く | 関東などの達磨市 |
関東などの達磨市に並んだ張り子の招き猫は、蚕を食べるネズミを追い払う意味で、おもに農家が求めたといわれます。素材が違えば、買い手の願いまで違っていたのです。
一方で、陶器の招き猫については、研究所が梅月冨本人形園で工程を取材しました。泥漿(でいしょう:液状にした粘土)を石膏の型に流し、外側が固まったら中を抜いて空洞にするそうです。
木目込み人形・博多人形・張子・土人形の招き猫の作り方と選び方は、人形の招き猫の記事で詳しく紹介しています。
手と持ち物で見る招き猫の種類

手と持ち物の違いは、招き猫に託す願いの違いを表しています。意味の詳しい話は別の記事に任せ、種類を見分けるための要点だけをまとめました。
上げた手と手の高さ
上げた手は右・左・両手の3通りで、手の高さでも種類が分かれます。観光庁の多言語解説文は、右足を上げた招き猫は幸運や富をもたらし、左足を上げた招き猫は人を招くとの説明です。
とくに左足を上げた招き猫は、千客万来を願う業種で人気があるとも紹介されています。そのため、店に置くか家に置くかで、選ぶ手が変わることもあるでしょう。
なお、豪徳寺(東京都世田谷区)が授ける招福猫児(まねきねこ)のように、右手を上げて小判を持たない姿を伝える寺もあります。
両手を上げた姿や、耳より高く手を上げた「手長」の意味は、手の左右と高さの記事でそれぞれ詳しく扱いました。
色と持ち物
柄のほかに、赤・ピンク・金などの色と、抱えた持ち物でも種類が分かれます。
招き猫研究所では、赤を病よけ、ピンクを恋愛成就、金を金運・仕事運の色と定義しています。
持ち物は、常滑系が抱える小判が代表です。常滑系について観光庁の多言語解説文は、上げていない方の前足に小判を握る姿だと説明しています。
研究所では、小判を金運の持ち物、鈴を招福・魔除け、前掛けを千客万来の装いと定義しました。つまり持ち物は、手や色とは別に願いを重ねられる部分といえるでしょう。
手・色・持ち物の意味の全体像と小判の由来は、次の2本で扱っています。
招き猫の後ろ姿と名入れの見どころ
招き猫は正面から眺める縁起物ですが、後ろ姿や名入れにも作り手の印や贈り主の願いが入ることがあります。正面だけでは気づきにくい違いを、2つの例から確かめましょう。
丸〆猫の「〆」と名入れ
今戸焼の丸〆猫は、お尻に丸で囲んだ「〆」の字が入るのが特徴です。辞書によると、丸〆猫は座った姿で片方の前足を上げた今戸人形を指します。
名前の由来になった印が正面から見えない位置にあるため、丸〆猫を見分けるときは後ろ姿も確かめるとよいでしょう。
一方、今作られている招き猫では、名入れが願いを書き残す方法にもなっています。研究所が取材した常滑の梅月冨本人形園は、節目の贈り物に名入れを施すことがあると話していました。例として挙がったのは、新築祝いや周年記念、就任祝いです。
名入れをした一体は、贈る相手のためだけの招き猫になります。そのため名入れは、贈り主の思いを形に残せる仕上げともいえるでしょう。
名入れの招き猫を贈る前に考えておきたい点は、贈り物の記事で扱っています。
よくある質問
Q. 招き猫は全部で何種類ありますか?
A. 招き猫の種類の数を定めた決まりはありません。柄・産地・手・持ち物の組み合わせで、種類はさらに広がります。まずは柄と産地の型から見分けるとわかりやすいでしょう。
Q. 寺社で授かる招き猫は、店で買う招き猫と違いますか?
A. 寺社の招き猫には、その寺社に伝わる縁起にもとづく姿のものがあります。豪徳寺の招福猫児は、小判を抱えずに右手を上げた姿で知られてきました。
Q. 日本の猫で三毛猫は珍しいですか?
A. 三毛という毛色そのものは、日本の猫に古くから見られます。日本大百科全書も、日本ネコの毛色に単色や縞とともに三毛などの斑を挙げました。珍しいのは雄の三毛猫で、三毛猫のほとんどは雌です。
Q. 招き猫はなぜ猫の姿なのですか?
A. 猫が顔を前足でこすると客が訪れるという中国の故事が、背景にあるといわれます。関東では豪徳寺で飼われていた猫が恩を返した話として語られ、農家では蚕を荒らすネズミを遠ざける願いも重ねられました。
招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」
招き猫の種類を見分ける手がかりは、柄に加えて、どの土地の型で誰が作ったかにあります。とはいえ、種類が多いほど、作り手の顔が見える一体を探すのは難しいと感じる人もいるでしょう。
研究所が手がける「Luxen Maneki」は、六古窯に数えられる瀬戸焼で作る招き猫です。金彩は伝統窯の職人の手描きで、ご注文をいただいてから一点ずつ、約4〜6週間で仕上げます。
柄は白の花筏・金の錦鯉・黒の浮世の3つで、どれも特製の桐箱に納めてお届けします。桐は湿気を吸ったり吐いたりして中を守る木です。燃え進みにくい性質から、昔は金庫の中に入れる箱の材料にもなりました。
まとめ
招き猫の種類は、柄・産地の型・素材・手と持ち物の4つで見分けられます。柄では三毛が常滑系の基本で、研究所の定義では白と同じ開運招福、黒は厄除けの柄です。
雄の三毛猫を航海の守りとした話は猫の俗信で、招き猫の三毛の意味とは分けて考えましょう。三毛猫がほとんど雌なのは、毛色を決める遺伝子がX染色体にあるためです。
ハチワレのように決まった意味のない柄は、好みで選んでかまいません。産地の型では、二頭身で小判を抱える常滑系と、細身で前垂れを着ける古瀬戸系の違いを押さえておきましょう。
店頭で迷ったら、柄と型を確かめてから、手と持ち物で願いを重ねると選びやすくなります。後ろ姿の印や名入れまで見ると、一体ごとの素性がよりはっきり見えてくるはずです。



















