この記事でわかること
- 厄除けの色は、公式2か所がそろって黒とする
- 赤は公式では健康、研究所の定義では病よけ
- 檀王法林寺には黒い招き猫の古い伝えがある
- 猫はネズミから経典や蚕を守る動物とされた
招き猫で厄除けを願うなら、公式2か所が厄除けの色とする黒が手がかりです。愛好家団体と窯元という立場の違う2か所が、いずれも黒に「厄除」の言葉を当てています。
一方で、赤を厄除けの色とする解説もありますが、公式が赤に当てている意味は健康です。猫が魔除けになるのかという疑問も、辞典と寺社の伝えをたどると答えが見えてきます。
招き猫の厄除けは黒【公式2か所の比較】

厄除けを託す色は、2か所の公式が口をそろえる黒です。厄除けの色として語られることの多い赤とあわせて確かめます。
厄除けと色のポイント
- 公式2か所はそろって黒を厄除けの色としている
- 赤は公式では健康の色、研究所の定義では病よけの色
- 黒の招き猫は、京都の檀王法林寺に古い伝えがある
公式2か所はそろって黒を厄除けの色とする
厄除けを願う招き猫の色は黒です。愛好家団体と窯元が黒と赤に当てた意味を並べました。
黒と赤の招き猫に当てられた意味(公式2か所)
| 公式 | 黒 | 赤 |
|---|---|---|
| 日本招猫倶楽部(愛好家団体) | 厄除開運 | 健康長寿 |
| 梅月冨本人形園(愛知県常滑市) | 厄除招福 | 健康招福 |
2か所とも黒に厄除の言葉を使っています。窯元の英語表記はTalisman against bad luckで、不運を退けるお守りという意味です。
つまり、災いを遠ざけたい願いには黒を選ぶのが、公式の説明に沿った考え方です。黒い招き猫の柄や選ばれ方については、黒の記事にまとめています。
赤は魔除けの色でも、公式の意味は健康
公式2か所のどこにも、赤を厄除けの色とする記述はありません。公式が赤に当てているのは、健康長寿や健康招福の意味です。
ただし赤という色そのものは、魔除けや疫病除けの力をもつ色として古くから扱われてきました。群馬県立歴史博物館は、だるまの赤もこうした赤の力と結びつけて紹介しています。
厄除けの意味を赤い招き猫に結びつける解説は、色のイメージに由来するものでしょう。研究所は、こうした疫病除けの歴史をふまえ、赤を病よけの色と定義しました。
研究所の定義でも、厄除けは黒の意味です。つまり、災いを遠ざけるなら黒、病を遠ざけるなら赤と分けて考えると選びやすいでしょう。
赤い招き猫の背景は赤の記事に、研究所による色の定義は意味の記事にまとめました。
黒の意味を知ったら、その黒を職人がどう仕上げるのかにも目を向けてみてください。招き猫研究所の運営会社、株式会社日本招き猫総合研究所としては「Luxen Maneki」も展開しています。
黒の招き猫「浮世」も、瀬戸焼の窯で職人の手描きによる金彩を施した一体です。
寺社に伝わる厄除けの招き猫
厄除けの願いは、寺社に伝わる猫の話にも見られます。京都の檀王法林寺と徳島のお松大権現の伝えから、その姿をたどりましょう。
檀王法林寺の黒招き猫
京都の檀王法林寺は、黒い招き猫に古い伝えをもつ寺です。寺がまつる主夜神(しゅやじん)尊は、仏典で恐れや災難を取り除くと説かれる神とされています。
寺の説明では、主夜は守夜に転じ、盗難や火災を防ぐ神として崇められてきました。闇夜に目を光らせる黒猫と結びついたのか、主夜神の使いは古くから黒猫とされています。
主夜神尊の銘を入れた招福猫は江戸の中ごろから作られ、右手を上げた黒い姿だったと寺は伝えます。ほかでのまねが許されないほど篤く信仰され、寺社にかかわる招き猫では最古とする説もあるそうです。
ただし、黒招き猫の伝えは寺独自のもので、黒が厄除けの色とされた由来を一つに決めるものではありません。だからこそ、黒と守りを結ぶ古い例の一つとして受け止めましょう。
寺の公式サイト(2026年10月時点)によると、毎年12月の第1土曜日に招福猫・主夜神大祭が開かれると案内されています。
お松大権現の除厄開運
徳島県阿南市のお松大権現も、除厄開運をご利益の一つに挙げています。勝負の神として知られる一方で、受験合格や商売繁盛、病気平癒と並べて除厄開運を掲げました。
由緒に伝わるのは、お松の無念を晴らそうと、愛猫の三毛が奉行の家にたたったという怪猫の話です。その猫が御祭神として祀られ、いまは境内に奉納された招き猫が並んでいます。
つまり、恐れられた猫の力が、守りとして祀られてきた例といえます。招き猫を祀る全国の寺社と、猫にまつわる伝説は、次の記事で紹介しました。
猫が魔除けや守りとされてきた背景

猫そのものが魔除けになるという決まった定義はありませんが、猫は守りの役目を託されてきた動物です。辞典と図書館の調査事例から、その背景をたどります。
ネズミから経典や蚕を守った猫
猫は、ネズミの害から大切なものを守る動物として迎えられてきました。世界大百科事典と日本大百科全書は、猫が経典をネズミから守るために日本へ来たという説を紹介しています。
鎌倉時代には、金沢文庫が典籍を守るために宋から猫を取り寄せ、金沢猫と呼ばれたともいいます。埼玉県の養蚕家は、蚕と繭をネズミから守るために猫の絵やお札を使ったと『新編埼玉県史』は記しました。
研究所が取材した島村恭則氏も、群馬や福島の養蚕地帯では、招き猫にネズミ除けと蚕の守りが求められたと話しています。日本大百科全書によれば、船乗りは三毛の雄猫を航海の守り神として大切にしてきました。
つまり猫は、目に見える害から暮らしを守る動物として頼られてきたのです。
猫が縁起のいい動物とされてきた背景や、柄にまつわる言い伝えは次の記事でまとめています。
魔性と守りは表裏の関係
猫は、守りの力と同時に、怪しい力をもつ動物とも見られてきました。世界大百科事典は、夜に光る目や音を立てない歩き方などから、猫には魔的なものが備わると考えられてきたと記しています。
『日本民俗事典』の記述では、猫は異界と行き来する、他界の使者のような存在と見なされていたようです。
だからこそ、怪しい力をもつと見られた猫に、災いを退ける守りの役目が重ねられたと考えられます。檀王法林寺の黒猫やお松大権現の猫も、畏れと守りが同じ猫に重なった例といえるでしょう。
猫に向けられてきた畏れや、招き猫が怖いといわれる理由は、別の記事で掘り下げました。
よくある質問
Q. 黒い招き猫は縁起が悪いのではありませんか?
A. 日本の招き猫では、黒は公式2か所がそろって厄除けの色としています。黒猫を不吉とみる見方は、西洋の俗信として辞典で紹介されているものです。招き猫の黒は、災いを遠ざける願いを込めた色と受け止めてよいでしょう。
Q. 厄除けの招き猫はどこに置けばよいですか?
A. 置き場所に決まりはなく、日本招猫倶楽部も身近でいつも目に入る場所を勧めています。玄関で外に向ける、北東の鬼門に置くといった置き方の決まりを、公式2か所は示していません。家族が出入りする場所など、守りたいものに近い場所を選ぶとよいでしょう。
Q. 厄除けの招き猫は何年で替えればよいですか?
A. 招き猫を手放す時期を定めた辞典や寺社の公式は見当たりません。豪徳寺のように、願いがかなった後に奉納する人が多い寺もあります。授かった一体をどう納めるかは、授けた寺社に確かめると安心です。手元の招き猫は、ほこりを払って大切に飾り続けてかまいません。
招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」
厄除けを願う一体は、家を守るものとして長く手元に置くことになります。だからこそ、どこで誰が作ったかを確かめたうえで迎えたいと考える人もいるでしょう。
「Luxen Maneki」には、黒の浮世のほか、白の花筏と金の錦鯉があり、いずれも瀬戸焼の招き猫です。伝統窯の職人が金彩を手で描き、注文から約4〜6週間をかけて一体ずつ仕上げています。
包装は特製の桐箱で、コレクションのページで3つの意匠を見比べられます。
まとめ
招き猫で厄除けを願うなら、公式2か所が厄除けの色とする黒が手がかりです。赤は魔除けの色とされてきたものの、公式が赤に当てている意味は健康で、研究所の定義では病よけです。
京都の檀王法林寺には主夜神の使いとしての黒猫の伝えがあり、お松大権現も除厄開運をご利益に挙げています。猫は経典や蚕をネズミから守る動物とされ、畏れと守りの両面で語られてきました。
願いに合う手を選び、黒い一体を守りたい暮らしのそばに迎えましょう。







