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招き猫の選び方

陶器の招き猫とは?磁器や素焼きとの違いと産地を解説

この記事でわかること

  • 陶器の招き猫は、広い意味で焼き物の招き猫全般を指す
  • 焼き物は土器・陶器・炻器・磁器の4つに分けられる
  • 今戸は素焼き、瀬戸は磁器、常滑は陶器の招き猫で知られる
  • 色は釉薬の下か上に描き、焼き付けて仕上げる

陶器の招き猫とは、土を形にして窯で焼いた、焼き物の招き猫のことです。「陶器」という言葉は、焼き物全体を指すこともあります。そのため、素焼きの土人形から白い磁器まで、さまざまな招き猫がこの呼び名に含まれます。

同じ陶器の招き猫でも、ざらりとした土の肌のものと、つるりと白いものがあるのはなぜでしょうか。

この記事では、辞典と伝統的工芸品の公的な解説をもとに、焼き物の分類と招き猫の素材の違いを整理しました。今戸・常滑・瀬戸・九谷・有田といった産地ごとの素材の違いも、あわせて紹介します。

陶器の招き猫とは

「黄瀬戸鉢」。黄色い釉に緑の斑点がある瀬戸の鉢
瀬戸「黄瀬戸鉢」(東京国立博物館蔵)/出典:ColBase

陶器の招き猫を知るには、「陶器」という言葉の範囲を押さえるのが近道です。言葉の意味が二通りあるため、狭い意味と広い意味を分けて考えましょう。

陶器の招き猫の要点

  • 「陶器」は、焼き物の一種を指す場合と、焼き物全体を指す場合がある
  • 焼き物は、土器・陶器・炻器・磁器の4つに分けて説明される
  • 東日本では、焼き物全体を「せともの」と呼ぶことも多い

「陶器」という言葉の2つの意味

「陶器」には、焼き物の一種という意味と、焼き物全体という意味の2つがあります。デジタル大辞泉は1つ目の意味を、素地の焼き締まりが中程度で、水をやや吸い、釉薬をかけた焼き物と説明しています。

土器よりかたく、磁器よりやわらかいものが、狭い意味での陶器です。一方で同じ辞典は、2つ目の意味として、焼き物の総称や「せともの」も挙げていました。

さらに、食器の辞典は、広い意味の陶器に土器や炻器(せっき)まで含める使い方を紹介しています。そのため、「陶器の招き猫」と書かれていても、素材が磁器や素焼きの場合もあるのです。

ブリタニカ国際大百科事典も、招き猫を陶製や張り子の猫と説明していました。つまり、陶器の招き猫は、紙の張り子などと区別して、焼き物の招き猫を指す呼び名と考えるとわかりやすいでしょう。

焼き物の4つの分類

焼き物は、土器・陶器・炻器・磁器の4つに分けて説明されるのが一般的です。違いは、土の焼き締まり方と、水を吸うかどうか、釉薬をかけるかどうかにあります。

焼き物の4つの分類と招き猫の例

分類素地の特徴釉薬招き猫の例
土器粘土を低い温度で焼いた素焼きの焼き物かけない今戸焼の素焼きの人形
陶器焼き締まりは中程度で、水をやや吸うかける常滑の陶器の招き猫
炻器かたく焼き締まり、水をほとんど吸わない。光は通さないかけないものもある常滑焼は炻器に分類される
磁器白く、水を吸わず、光を少し通すかける瀬戸の磁器の招き猫

ただし、日本国語大辞典は、陶器と磁器の間は連続していて、はっきりした境目はないとしています。炻器という言葉も、明治の終わりごろから使われ始めた比較的新しい用語です。

そのため、4つの分類は素材の性質を知るための目安と受け止めるとよいでしょう。手元の招き猫の素材を正確に知りたいときは、商品の表示や作り手の説明で確かめてください。

扱い方や手入れのしやすさから、陶器と磁器の招き猫を選び分ける方法は、招き猫の置物の選び方をまとめた記事が参考になります。

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「せともの」と呼ばれる理由

東日本で焼き物を「せともの」と呼ぶのは、瀬戸の焼き物が広く出回った名残です。日本国語大辞典は「瀬戸物」を、愛知県瀬戸市を中心に作られる陶磁器とし、転じて陶磁器の総称になったと説明しています。

戦国時代の記録にも、すでに「せと物」の語が見えるそうです。一般に広く使われるようになったのは、江戸時代のことでしょう。世界大百科事典は、瀬戸や美濃の日常の食器が全国に流通したことを、その理由に挙げています。

一方で、西日本では「唐津物(からつもの)」の呼び名が広く使われてきました。瀬戸・美濃と唐津・有田が、焼き物づくりを東西に二分していたことの反映と考えられています。

つまり、焼き物の招き猫を「せともの」と呼んでも、言葉の上では誤りではありません。呼び名に、焼き物の産地の歴史が残っているといえるでしょう。

素材で異なる招き猫の姿

焼き物の招き猫は、産地ごとに得意な素材が違い、素材の違いが姿に表れます。今戸の素焼き、常滑の陶器、瀬戸や九谷・有田の磁器では、肌の質感も色の付け方も異なります。

今戸焼の素焼きの招き猫

江戸の今戸焼は、釉薬をかけない素焼きの焼き物です。日本国語大辞典は今戸焼を、東京都台東区今戸で作られる素焼きの土器と説明し、人形などの玩具も作られたと記しています。

素焼きとは、本来は釉薬をかける前に素地をいったん焼き締める作業のことです。今戸焼は、その段階の焼き物に色を塗って仕上げていました。

今戸人形は、群青と朱を主にした彩色で、小さなものが多いと日本大百科全書は紹介しています。その中の丸〆猫(まるしめねこ)は、数ある招き猫の中でいちばん古い作例とされるものです。

そのため、素焼きの招き猫には、土の素朴な肌と、上から塗った色の味わいがあります。釉薬で覆った焼き物とは、手ざわりも見た目も異なるのです。

工芸史研究者の畑中英二氏は研究所の取材で、素焼きに絵の具で描いた置物について「ということは、水拭きはできへんし。で、かつ、外にも置けないですよね。」と語っています。釉薬で覆われていない分、水拭きにも屋外にも向かないということです。素焼きの招き猫は水気を避け、屋内に飾る前提で迎えるとよいでしょう。

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丸〆猫の由来と、今戸焼の招き猫の今の作り手については、今戸焼の記事で詳しく扱いました。

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常滑の陶器の招き猫

常滑は、陶器の招き猫を数多く生み出してきた産地です。観光庁の多言語解説文も、常滑を陶器の招き猫の大きな産地と紹介しています。

もっとも、常滑焼そのものは、かたく焼き締めた炻器として知られてきました。日本国語大辞典は常滑焼を炻器とし、伝統的工芸品の解説も、鉄分の多い粘土を高温で焼き締めた朱泥の急須を代表に挙げています。

これに対して常滑の招き猫は、液状の粘土を石膏型に流して形づくり、色を付けて仕上げる置物です。梅月冨本人形園では、県内などから取り寄せた原料で、その液状の粘土を作っていました。

つまり、同じ常滑でも、急須の焼き締めと、招き猫の型づくりは別の仕事なのです。常滑の招き猫を手に取るときは、土の産地よりも、型と絵付けの仕事に目を向けると違いがわかります。

常滑が招き猫の産地になった背景と、常滑系の姿の特徴は、常滑焼の記事で紹介しています。

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瀬戸の磁器の招き猫

瀬戸の招き猫は、なめらかな白い肌の磁器が特徴です。愛知県の公式観光サイトも、瀬戸系の招き猫を、細かい表現が得意な磁器の上品な猫として紹介しています。

磁器の白さは、原料の土から生まれるものです。伝統的工芸品の瀬戸染付焼の解説によると、瀬戸の粘りの強い粘土に、光を通す性質のある長石などを合わせて陶土を作ります。

あわせて、焼き方も白さを左右します。研究所が取材した瀬戸の窯元は、ガス代が余分にかかっても、高めの温度で焼いて白さを出すことを選んでいました。

磁器は、白く、水を吸わない性質をもつ焼き物です。そのため、白い招き猫を長くきれいに飾りたい人には、瀬戸の磁器が候補になるでしょう。

瀬戸の招き猫の歴史と、古瀬戸と呼ばれる型の特徴は、瀬戸焼の記事にまとめました。

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九谷焼・有田焼の色絵磁器の招き猫

九谷焼のまねきねことは、石川県の九谷焼の技法で、色鮮やかな上絵を施した磁器の招き猫です。伝統的工芸品の九谷焼は、上絵付に「九谷五彩」の全部または一部を使うことが条件の一つになっています。

九谷五彩とは、緑・黄・赤・紫・紺青の5色です。日本招猫倶楽部も、石川県の金沢市や小松市を招き猫の主な産地に挙げています。

一方で、佐賀県の有田焼も磁器の産地です。伝統的工芸品の解説によると、有田焼は日本で最初の磁器ともいわれ、青一色の染付から色鮮やかな上絵付まで表現の幅があります。

つまり、九谷・有田の招き猫は、白い磁器を画面にして色を楽しむ招き猫といえます。絵付けの華やかさを重視するなら、この2つの産地から選ぶのも手です。

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焼き物の招き猫の色のつけ方

九谷「色絵花卉文九角皿」。赤・青・緑で花と鳥を描いた九角形の皿
九谷「色絵花卉文九角皿」江戸時代・17世紀(京都国立博物館蔵)/出典:ColBase

焼き物の招き猫の色は、釉薬の下に描くか、上に描くかで仕上がりが変わります。色を焼き付けるか、素焼きの上から塗るかでも、扱い方は違ってくるでしょう。

釉薬の下に描く下絵付

下絵付の色は、表面を覆うガラス質の釉薬の下に収まります。日本国語大辞典によると、釉薬は素焼きした陶磁器の表面にかける、ガラスの性質をもつ液です。

工芸史研究者の畑中英二氏も、研究所の取材に「これ、ガラスなんですよ。粘土の上に、ガラスが一層ある、っていう、そういう状態なんですね。」と語っています。招き猫の表面の釉薬も、粘土を覆うガラスの層だということです。下絵付の色は、このガラスの層の下に収まっています。

伝統的工芸品の有田焼の解説も、釉薬を陶磁器の表面を覆う薄いガラス質と説明しています。素焼きの素地に呉須で描いた下絵は、この釉薬の層の下で焼き付けられるのです。

デジタル大辞泉でも、絵付けは絵模様をかいて陶磁器に焼き付けることとされています。焼き付けた色の持ちについて、瀬戸の窯元の藤井さんは取材で、陶器は一度買えば色あせないと語っていました。

一方で、今戸焼のように素焼きに色を塗った招き猫は、釉薬で覆われていない分、色が表面に塗られた状態です。焼き付けた色か、塗った色かを知っておくと、飾り方や扱い方を考えやすくなります。

上絵付と金彩

赤や金などの華やかな色は、釉薬をかけて焼いたあとに描く上絵付で表されることが多いものです。デジタル大辞泉は上絵を、素焼きに釉をかけて焼いた上に、さらに色釉で描き上げた絵と説明しています。

金で彩る装飾は、金彩(きんさい)と呼ばれます。同じ辞典によると、金箔や金泥で細工物などをいろどること、またそのものを指す言葉です。

九谷焼には、器の全面に赤を塗ってから金で彩る様式もあります。上絵付は釉薬の上に描くため、筆の線が表面に残るのです。

だからこそ、上絵付や金彩の招き猫を選ぶときは、色の重なりと筆の線に目を向けると、仕上げの違いがわかります。

金彩の筆の線まで確かめられる、瀬戸焼の招き猫を探している人もいるでしょう。その候補のひとつが「Luxen Maneki」です。株式会社日本招き猫総合研究所、つまり招き猫研究所の運営会社が立ち上げたブランドです。

絵付けを受け持つのは伝統窯の職人で、金彩は一体ごとに手で描かれています。

陶器の招き猫の主な産地

陶器の招き猫の産地は、愛知県の瀬戸と常滑を中心に、全国に点在しています。素材と姿の違いを、産地ごとに一つの表にまとめました。

産地と素材の早見表

産地を選ぶときは、素材と仕上げの違いから考えると迷いません。日本招猫倶楽部は、今の主な産地に愛知県の瀬戸市・常滑市、岐阜県の多治見市、石川県の金沢市・小松市を挙げています。

陶器の招き猫の主な産地と素材

産地素材見た目の特徴
今戸焼(東京都台東区)素焼きの土器素朴な土の肌に色を塗る
常滑焼(愛知県常滑市)陶器型で作る二頭身の姿が多い
瀬戸焼(愛知県瀬戸市)磁器なめらかで白い肌
九谷焼(石川県)磁器九谷五彩の豪華な上絵付
有田焼(佐賀県)磁器染付から色鮮やかな上絵付まで

ほかの焼き物の縁起物と比べると、招き猫の産地の広さがよくわかるはずです。たとえば、デジタル大辞泉の信楽焼の項には、狸の置物が有名と添えられています。

これに対して招き猫は、素焼きの今戸から磁器の瀬戸・九谷・有田まで、素材の違う産地がそれぞれの姿を育ててきた縁起物です。

あわせて、海外でも多く作られていると同倶楽部は説明しています。産地を重視するなら、表示で国と産地を確かめてから選びましょう。

全国の産地ごとの招き猫の違いは、産地の記事で詳しく比べています。

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よくある質問

Q. 陶器の招き猫の作家は誰ですか?

A. 陶器の招き猫に、決まった一人の作家はいません。今戸・常滑・瀬戸などの産地の窯元や、陶芸家がそれぞれの招き猫を作っています。常滑の「とこなめ招き猫通り」には、39体の招き猫が並んでいます。どれも常滑ゆかりの陶芸家が手がけたもので、作家ごとの表現を見比べられるでしょう。

Q. 陶器と磁器の招き猫は、どちらを選べばよいですか?

A. 水を吸わない性質を重視するなら磁器、土の風合いや素朴さを楽しみたいなら陶器が向いています。どちらも焼き物のため、落とすと割れる点は共通です。置く場所の湿気や、手入れのしやすさもあわせて考えて選びましょう。

Q. 割れた陶器の招き猫は直せますか?

A. 割れたり欠けたりした陶磁器は、「金継ぎ」で直せる場合があります。金継ぎは、漆で接着し、継ぎ目に金などの粉を蒔いて飾る日本独自の修理法です。継ぎ目を景色として楽しむ考え方もあります。割れを防ぐには、奥行きに余裕のある場所に飾りましょう。

招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」

陶器の招き猫は、素材と仕上げを知るほど、一体ごとの違いが見えてくる縁起物です。けれども、売り場の招き猫がどの産地で、どのように色を付けたものなのかは、表示だけではわからないこともあります。

研究所が手がける「Luxen Maneki」は、六古窯のひとつに数えられる瀬戸の焼き物です。金彩を手で描き入れてから届ける受注生産のため、お届けまでに約4〜6週間かかる見込みです。

白の花筏、金の錦鯉、黒の浮世から選べ、特製の桐箱に納めて送り出しています。桐は湿気を吸ったり吐いたりして中を守り、燃え広がりにくい木です。その性質から、かつては金庫の内箱にも選ばれていました。

まとめ

陶器の招き猫とは、土を形にして焼いた、焼き物の招き猫のことです。「陶器」は焼き物全体を指すこともあり、素焼きの土人形から白い磁器までが、この呼び名に含まれるのです。

焼き物は土器・陶器・炻器・磁器に分けられ、今戸は素焼き、常滑は陶器、瀬戸・九谷・有田は磁器の招き猫で知られます。色は釉薬の下か上に描いて焼き付けるのが基本で、素焼きに塗った色とは扱い方が変わります。

選ぶときは、表示で産地と素材を確かめ、素材の性質と飾る場所を合わせることが大切です。素材の違いを知ったうえで迎えた一体は、長く飾るほど愛着が深まるでしょう。