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産地と窯元

常滑焼の招き猫はなぜ有名?瀬戸との違いや買える場所を解説

この記事でわかること

  • 常滑系は丸い目と二頭身で、大きな小判を抱えた陶器の招き猫
  • 常滑が産地になったのは、窯業の技術と戦後の新しい仕事のため
  • 瀬戸系は磁器でスリム、常滑系は陶器でふっくらした姿
  • 招き猫通りや観光協会が案内する施設で出会い、買える

常滑焼の招き猫は、愛知県常滑市でつくられる陶器の招き猫です。丸い大きな目と二頭身の姿は「常滑系」と呼ばれ、商売繁盛を願って飲食店などの店先にも飾られてきました。

その丸い顔の招き猫が、どこで、なぜ生まれたのかを知っているでしょうか。

千年続く焼き物の町が招き猫の産地になった理由、瀬戸系との違い、現地で招き猫に出会える場所と買える場所を順にまとめました。観光協会・愛知県・観光庁の公式情報と、常滑の窯元への研究所の取材をもとにしています。

常滑焼の招き猫とは

常滑焼(愛知県常滑市)の招き猫は、「常滑系(とこなめけい)」と呼ばれる型の招き猫です。丸い顔と大きな目、二頭身の体で大きな小判を抱えた姿が目印です。

常滑焼の招き猫の要点

  • 丸い顔・大きな目・二頭身で、大きな小判を抱えた陶器の招き猫
  • 常滑焼は平安時代末期から続く、日本六古窯のひとつ
  • 招き猫は、その長い歴史の中では新しい製品

常滑系招き猫の姿

常滑系の招き猫は、頭と体がほぼ同じ大きさの二頭身でつくられています。愛知県の観光サイトは、大きな耳と丸い顔、大きく垂れた目を持つ姿として紹介されてきました。

常滑系招き猫の姿の特徴

部分常滑系の特徴
頭と体二頭身で、ずんぐりとした体つき
顔丸い顔に大きな耳、丸く大きな目
持ち物片方の前足で大きな小判を抱える
素材陶器

がっちりと抱えた小判は、商売繁盛を表すものとして描かれてきました。上げた手にも願いが込められ、右手を上げた姿はお金を、左手を上げた姿は人を招くといわれています。

なお、観光庁の多言語解説文では、白・黒・オレンジの三毛猫の招き猫が今も根強い人気だと紹介されています。手の左右や小判に込められた願いは、それぞれ別の記事で詳しく扱いました。

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千年続く焼き物「常滑焼」

常滑焼は、平安時代末期から続く日本六古窯のひとつです。六古窯とは、中世から今までやきものづくりが続く越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前の6産地をいいます。

常滑での窯業は12世紀初め頃に始まり、壺や甕(かめ)が船で全国へ運ばれました。江戸時代には急須、明治以降は土管やタイルが量産されています。

つまり、常滑は時代ごとに求められるものを焼き分けてきた町です。日本六古窯の公式サイトも、急須や招き猫の歴史は比較的浅いと書いています。

招き猫は千年の焼き物の歴史の中で、新しく加わった製品のひとつといえるでしょう。招き猫そのものの由来や、ほかの産地については総合的な解説記事にまとめています。

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常滑が招き猫の産地になった理由

常滑が招き猫の産地になったのは、千年の窯業の土台に、型の技術と新しい仕事が重なったためです。土と海に恵まれた町が、明治以降に型の技術を取り入れ、昭和に入って招き猫を選びました。

なぜ常滑が招き猫の産地なのか

  • 焼き物に向いた土と、船で運べる海があった
  • 石膏型の技術を取り入れ、型と分業で数をつくれた
  • 焼き物産業が下火になったとき、新しい仕事として招き猫を始めた

土と海に恵まれた窯業の町

常滑が千年続く焼き物の町になった背景には、土・地形・海の3つがあります。知多半島の土は、かつてこの地域にあった東海湖の堆積物に由来し、鉄分を多く含んでいるのが特徴です。

低い温度でも焼き締まるため、大きな甕や壺づくりに向いていました。また、ゆるやかな丘陵地は窯を築きやすく、知多半島には多くの窯が並びました。

さらに、常滑は伊勢湾に面しており、重い焼き物を船で東西へ運べました。そのため、常滑焼の甕や壺は、全国各地の遺跡から見つかっています。

土・窯・運ぶ手段の3つがそろっていたことが、のちに招き猫をつくる技術と人の土台になりました。

石膏型の技術と、新しい仕事としての招き猫

常滑の招き猫は、焼き物産業が下火になった時期に、新しい仕事として始まりました。観光庁の解説は、伝統的な焼き物産業が衰えるなかで、地元の職人が新たな商いとして置物をつくり始めたと伝えています。

愛知県の観光サイトも、それまでの主要産業が下火になり、その代わりとして招き猫をつくり始めたと紹介しています。その支えになったのが、明治以降に取り入れた石膏型など西洋の技術でした。

石膏型を使えば、同じ形を何体もつくれます。梅月冨本人形園の取材でも、戦後の常滑では大勢が分担して関われる仕事が必要とされていたと聞きました。

一方で、ほかの縁起物の産地は、まったく違う道筋で生まれています。高崎のだるまは、稲の収穫を終えた秋から春にかけての仕事として作られ、海外から赤の顔料が入ってきたことで盛んになりました。

それに対して常滑の招き猫は、農家の副業ではなく、千年の窯業の町が産業の移り変わりの中で選んだ製品です。土地の生業によって、縁起物の生まれ方は異なります。

昭和20年代に生まれた二頭身の形

今の丸い常滑系の形は、昭和20年代(1945〜1954年)に生まれました。常滑では戦前から招き猫がつくられていたものの、当時は本物の猫に近い、すらりとした体形だったそうです。

工芸史研究者の畑中英二氏は、研究所の取材に「戦後に登場してくる、常滑系招き猫っていうのは、二頭身なんですね。」と語っています。畑中氏は、戦後には信楽の狸も二頭身になっていったと話しました。常滑の二頭身は、戦後の縁起物が丸くかわいい姿へ変わっていく流れの中で生まれた形といえます。

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形を大きく変えたのは、梅月冨本人形園の三代目と、友人の原型師でした。丸い頭に大きな瞳、ずん胴の体を持つ招き猫を考え、その姿が全国に広まったと観光協会は紹介しています。

あわせて、研究所の取材でも、冨本さんの祖父の代に招き猫づくりが本格化したと聞きました。昭和25年(1950年)頃までには、丸い目と二頭身の基本の形が整っていたといいます。

常滑と招き猫の年表

時代常滑と招き猫の出来事
平安時代末期(12世紀初め頃)知多半島で焼き物づくりが始まる
江戸時代急須がつくられるようになる
明治時代以降土管やタイルを量産し、石膏型など西洋の技術を取り入れる
戦前(1930年代後半)招き猫づくりが始まる。すらりとした体形
昭和20年代丸い頭と二頭身の形が生まれ、全国へ広まる
1950年頃常滑が招き猫の主な産地になる

年表の「1930年代後半」と「1950年頃」は、観光庁の解説にもとづく年代です。招き猫が江戸時代から明治、昭和へとどう広まったかは、歴史の記事で詳しく扱っています。

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常滑系と瀬戸系の招き猫の違い

愛知県には常滑と瀬戸という2つの招き猫の産地があり、素材も姿も、量産が始まった時期も違います。どちらが優れているということではなく、それぞれの土地の技術が姿に表れているのです。

素材と姿の違い

常滑系は陶器でずんぐりとした二頭身、瀬戸系は磁器でスリムな姿です。瀬戸系は、柔らかな線や前掛けのフリルなど細かな表現を得意としています。

常滑系と瀬戸系の招き猫の違い

項目常滑系瀬戸系
素材陶器磁器
姿ずんぐりとした二頭身生きた猫に近いスリムな姿
顔丸い顔・大きな耳・大きな目決まった形がなく、表現の幅が広い
持ち物大きな小判を抱える作品によってさまざま
量産の始まり瀬戸に続き、戦前から昭和20年代明治30年代に磁器の量産を始める

磁器の招き猫を日本で最初に量産したのは明治30年代の瀬戸だと、愛知県の観光サイトは紹介しています。先に量産した瀬戸がスリムな形、あとから続いた常滑が丸い形という順番です。

つまり、常滑系の丸い顔は、すでにあった姿とは違う招き猫として生まれたものと読めます。瀬戸の招き猫の歴史と特徴は、別の記事にまとめました。

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産地の違いを知って選ぶ

産地の違いは、好みの姿を選ぶための手がかりとして使えます。丸い顔で小判を抱えた招き猫が好きなら常滑系、すらりとした姿や細かな表現が好きなら瀬戸系が候補になるでしょう。

ただし、どちらの産地にも多くの作り手がいて、作品ごとに表情は異なります。そのため、産地名だけで決めずに、顔や大きさを見比べて選んでみてください。

常滑・瀬戸に九谷焼などを加えた産地ごとの違いは、産地の記事で整理しています。

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では、瀬戸では今どんな作り手が招き猫を手がけているのでしょうか。その一つが、招き猫研究所を運営する株式会社日本招き猫総合研究所のブランド「Luxen Maneki」です。

瀬戸焼の招き猫に、伝統窯の職人が手描きで金彩を施し、一点ずつ仕上げているのが特徴です。

常滑で招き猫に出会える場所と買える場所

常滑では、駅から歩いて招き猫の並ぶ通りを巡り、窯元や施設で一体を選べます。まちの中で出会う招き猫と、買って持ち帰れる場所に分けて見ていくと、旅の計画も立てやすいでしょう。

常滑で招き猫に出会う・買うときの要点

  • 名鉄常滑駅から歩いて、とこなめ招き猫通りととこにゃんに会える
  • 観光協会は、窯元や絵付け体験のできる施設を案内している
  • 窯元では、筆で描かれた顔を見比べて選べる

とこなめ招き猫通りととこにゃん

とこなめ招き猫通りは、名鉄常滑駅から常滑市陶磁器会館へ向かう道沿いの通りです。コンクリートの壁に、陶製の招き猫が並んでいます。

並ぶのは、市内の陶芸作家39人が一体ずつ手がけた「御利益陶製招き猫」です。縁結びや無病息災など、一体ごとに違うご利益が込められ、作者名を書いたサインボードも添えられています。

さらに、通りの途中では、巨大な招き猫「とこにゃん」が壁の上から顔をのぞかせています。大きさは高さ3.8m・幅6.3mで、頭と左の前足だけの姿です。

とこにゃんの近くには、本物そっくりの猫の置物が11体隠れています。通りは名鉄常滑駅から徒歩5分ほどで、やきもの散歩道の入口にもつながっています。

あわせて、イオンモール常滑の正面入口に置かれた高さ6.5mの招き猫「おたふく」も見どころです。

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とこにゃんを含む市内の巨大招き猫6体と、見て回る順番は次の記事にまとめています。

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観光協会が案内する招き猫が買える場所

常滑で招き猫を買うなら、常滑市観光協会が案内する窯元や施設から探すと迷いません。観光協会の特集ページは、招き猫を扱う場所として以下の施設を紹介しています。

常滑市観光協会が案内する、招き猫が買える場所

施設できること営業時間(2026年10月時点)
梅月冨本人形園常滑系招き猫の窯元。職人の手作りの招き猫を販売9:00〜12:00、13:00〜17:00(土日祝・GW・お盆・年末年始休み)
まちの駅 常滑焼ヤマタネ多くのデザインの招き猫と常滑焼を扱う複合施設9:00〜17:00(無休)
常滑ドットコム(イオンモール常滑内)招き猫の販売と絵付け体験10:00〜21:00
ほたる子登窯の前のギャラリー。常滑焼作家の招き猫を展示販売10:00〜17:00(木曜・年末年始休み)
登窯広場展示工房館陶芸作家の作品販売と招き猫の絵付け体験9:30〜16:30(水曜・年末年始休み)
とこなめ観光案内所(常滑市陶磁器会館)梅月冨本人形園の招き猫や、招き猫の菓子・雑貨を販売9:00〜16:30(年末年始休み)

出典:とこなめ観光ナビ「猫のまち常滑 招き猫特集」
出典:とこなめ観光ナビ「梅月冨本人形園」

ただし、梅月冨本人形園は土日祝日が休みのため、週末に訪ねる場合は観光案内所やまちの駅で探すとよいでしょう。愛知県の観光サイトは、来店前に連絡すれば在庫を確かめられると案内しています。

営業時間や休みは変わることがあるため、出かける前に各施設の公式情報を確認してください。通販や専門店も含めた買い方の全体像は、別の記事で比べました。

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窯元で顔を見て選ぶ

常滑の窯元で選ぶよさは、一体ずつ違う顔を見比べられることにあります。梅月冨本人形園では、泥漿(でいしょう:水で液状にした粘土)を石膏型に流し込んで形をつくります。

型が同じなので、基本の形はどれも同じです。そのあと職人が目とひげを筆で描き入れるため、わずかな筆の違いで表情が変わると冨本さんは話していました。

なかには、以前飼っていた猫と顔が似ているからと、一体を選ぶ人もいるそうです。冨本さんは招き猫を、福を呼ぶ道具というより見る人を笑顔にするものと捉えています。

そのため、梅月冨本人形園の招き猫は、新築祝いや周年記念、就任祝いといった節目の贈り物にも選ばれてきました。お土産や贈り物にするなら、顔を見て「この子」と思える一体を選ぶとよいでしょう。

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よくある質問

Q. 常滑焼の招き猫の色にはどんな意味がありますか?

A. 色ごとに願いが重ねられてきました。常滑市観光協会は、金は金運、白は来福、黒は厄除け、赤は健康の招福と紹介しています。桜色は恋愛、青は安全、黄は良縁、緑は合格の招福とされ、願いに合わせて色を選ぶ人が多いでしょう。なお招き猫研究所の定義では、赤は病よけ、緑は健康長寿、青は学業向上、黄は人望招福と定義しました。

Q. 常滑で招き猫の絵付け体験はできますか?

A. 体験できる施設があります。常滑市観光協会は、イオンモール常滑内の常滑ドットコムと、登窯広場展示工房館を案内しています。登窯広場展示工房館は筆ではなく専用のペンで描くため、小さな子どもでも参加しやすいそうです。

Q. とこなめ招き猫通りへはどう行けばよいですか?

A. 名鉄常滑駅で降りて、徒歩5分ほどです。通りは駅から常滑市陶磁器会館へ向かう道沿いにあり、とこにゃんまでは駅から徒歩10分ほどかかります。陶磁器会館はやきもの散歩道の出発点で、観光案内所も入っているので立ち寄るとよいでしょう。

Q. 常滑で招き猫のお祭りはありますか?

A. イオンモール常滑で、「とこなめ焼 まねき猫まつり」が開かれています。2025年は12月6日・7日に開かれ、招き猫の展示や絵付け体験、招き猫メイクなどがおこなわれました。2026年の日程は、常滑市観光協会の公式サイトで確認してください。

招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」

常滑の窯元で顔を見比べるように、作り手と産地がわかる一体を迎えたいと考える人もいるでしょう。量産の置物と何が違うのかが気になるかもしれません。

Luxen Manekiは瀬戸焼の招き猫で、伝統窯の職人が手描きで金彩を施します。注文を受けてから約4〜6週間かけて、一点ずつ仕上げる受注生産です。特製の桐箱に納めて届け、白の花筏・金の錦鯉・黒の浮世の3種類があります。

産地の招き猫を知ったうえで、もう一つの選択肢として確かめてみてください。

まとめ

常滑焼の招き猫は、丸い顔と大きな目、二頭身で大きな小判を抱えた「常滑系」の招き猫です。千年続く焼き物の町が、石膏型の技術を生かし、産業の移り変わりの中で新しい仕事として選びました。

今の丸い形が生まれたのは昭和20年代で、先に量産を始めた瀬戸系のスリムな姿とは違う招き猫として全国に広まりました。陶器でふっくらした常滑系と、磁器で細やかな瀬戸系は、好みの姿で選び分けられます。

常滑を訪ねるなら、名鉄常滑駅からとこなめ招き猫通りを歩き、とこにゃんに会いましょう。そのあとで、窯元や観光協会が案内する施設へ向かうのがよい順番です。筆で描かれた顔を見比べて、自分の一体を選ぶのが、産地ならではの楽しみ方です。