この記事でわかること
- 両手上げは、お金と人の両方を招くといわれる
- 「お手上げ」に見えるとして敬遠する向きもある
- 両手を上げる動作は、祝いと降参の両方を表す
- 気になるなら、左右二体や片手を選ぶ方法がある
両手を上げた招き猫は、右手のお金と左手の人を、一体で両方招くといわれています。その一方で、両手を上げた姿が「お手上げ」に見えるとして敬遠する向きもあります。縁起がよいのか悪いのか、迷った人もいるのではないでしょうか。
どちらの見方にも、それぞれ理由があります。辞典や寺社の公式情報などをもとに、両手の意味と敬遠される理由、選び方を整理しました。
両手を上げた招き猫の意味
両手の招き猫の意味は、右手と左手それぞれの意味を重ねたものです。そのため、片手の左右に伝わる意味を知ると、両手の招き猫が何を招くとされるのかも見えてきます。
お金と人の両方を招くといわれる
両手を上げた招き猫は、お金と人の両方を招くといわれています。愛好家団体の日本招猫倶楽部は、右手はお金、左手は人や客を招く手だと紹介しました。
両手の招き猫については、招き猫美術館の学芸員がテレビ番組で触れています。2016年放送のTBS「この差って何ですか?」で、両手の招き猫はお金とお客のどちらも招きたい人向けだと解説しました。
上げている手と招くといわれるもの
| 上げている手 | 招くといわれるもの | 伝わる受け止め方 |
|---|---|---|
| 右手 | お金・金運 | 自宅に置かれることが多い |
| 左手 | 人・客 | 店先に置かれることが多い |
| 両手 | お金と人の両方 | 「お手上げ」に見えるとして敬遠する向きもある |
表の右の列にある置き場所の傾向も、同じ番組で学芸員が話した内容です。つまり両手の意味は、片手の左右の意味を足し合わせた解釈だといえます。
願いを一つに絞らず、一体に両方を託したい人に向く形と受け止めるとよいでしょう。
左右の意味が変われば両手の意味も変わる
両手に託す願いは、土台にする左右の意味によって変わります。右手はお金、左手は人という分け方は広く知られているものの、寺社の中には別の意味を伝えるところもあるのです。
大阪の住吉大社は、境内の楠珺社(なんくんしゃ)で授かる招き猫の意味を公式サイトで紹介しています。左手挙げは「家内安全」と人招き、右手挙げは「商売発達」とお金招きのご利益とされてきました。
世田谷の豪徳寺では、招き猫を「招福猫児(まねきねこ)」と呼びます。小判を持たず右手だけを上げた姿で、人を招いて「縁」をもたらすと伝えています。
ただし、どちらの寺社も公式サイトで紹介しているのは、片手を上げた招き猫です。そこで両手の招き猫を寺社の考え方に重ねるなら、商売と家庭の両方を願う形として読むこともできます。
右手と左手の意味が生まれた背景や、寺社ごとの左右の違いは別の記事で詳しく扱っています。
招き猫研究所が定義する手の意味
招き猫研究所では、両手を含む手の意味を次のように定めています。研究所の定義では、両手の招き猫を「お手上げ」とは読みません。
招き猫研究所の手の定義
| 手 | 招き猫研究所の定義 | 研究所の考え方 |
|---|---|---|
| 右手 | 金運(お金を招く) | 右手の手招きは、お金の巡りと商いの実りを呼び寄せる |
| 左手 | 人招き(客と縁を招く) | 左手の手招きは、客・仲間・良い出会いなど、人とのご縁を呼び寄せる |
| 両手 | お金と人の両方を招く | 右手と左手の願いを一体に重ねた姿。研究所では「お手上げ」とは読まない |
| 手長(上げた手が耳より高い) | 遠くの福・大きな福を招く | 高く伸ばした手は、まだ見ぬ遠くの客や大きな福まで呼び寄せる |
| 手短(上げた手が耳より低い) | 身近な福を招く | 顔のそばの手は、毎日の暮らしの中にある身近な福を呼び寄せる |
この定義は、色・持ち物の定義とあわせて招き猫研究所 資料室の「招き猫研究所の定義」にまとめています。
招き猫の両手はよくない?敬遠される理由
両手を上げた招き猫が敬遠されるのは、その姿が「お手上げ」を連想させるためです。とはいえ、両手を上げる動作そのものは、祝いの場面でも使われてきました。
両手の招き猫が「よくない」といわれる理由
- 両手を上げた姿が「お手上げ」に見えるため
- 両手を上げる万歳には、祝いと降参の両方の意味がある
- 「よくない」は決まりではなく、受け止め方の違い
「お手上げ」に見えるという理由
両手の招き猫が避けられる理由は、「お手上げ」の姿に見えることです。
集英社の時事用語事典イミダスは、2002年の流行・ヒット商品の項目で両手の招き猫に触れました。それまで両手の招き猫は「お手上げ」を連想させ、縁起が悪いとされていたと記しています。
つまり、両手の招き猫が「よくない」といわれるのは、ご利益が減るという話ではありません。姿から連想される言葉を気にする人がいるという、受け止め方の問題です。
両手や色、小判を組み合わせたタトゥーの図案の意味は、別の記事で紹介しています。
万歳の動作がもつ祝いと降参の意味
両手を上げる動作には、祝いと降参という正反対の意味があります。デジタル大辞泉は「万歳」を、祝いや喜びの気持ちを込めて唱える言葉と説明しています。
唱えるときには、多くの場合に威勢よく両手を上げる動作を伴い、その動作も万歳と呼ぶそうです。一方で同じ辞典は、この動作から転じた「降参すること、お手上げ」という意味も載せています。
両手を上げる動作の二つの意味
| 意味 | 辞典の説明 | 両手の招き猫に重ねると |
|---|---|---|
| 祝い・喜び | 祝いの気持ちを込めて万歳を唱え、両手を上げる | お金も人も招く、にぎやかな姿 |
| 降参 | 万歳の動作から転じて、降参すること・お手上げ | 「お手上げ」に見えて避けられる姿 |
両手の招き猫を縁起がよいと見るか悪いと見るかは、同じ動作のどちらの意味を思い浮かべるかで分かれるのです。
他の縁起物と比べると、この迷いは招き猫ならではのものだとわかります。だるまは、達磨大師の座禅の姿をまねた手足のない張り子です。
最初に片目だけを入れ、願いがかなったときにもう一方の目を描き入れる風習があると、デジタル大辞泉は記しています。高崎だるまの組合も、眼入れを「心の目の開眼」を表すものと説明しました。
だるまでは両目がそろうことが成就の印になる一方、招き猫では両手がそろう姿に賛否が分かれます。手の所作で願いを表す招き猫だからこその迷いといえるでしょう。
両手の招き猫が話題になった時代
両手の招き猫は、2002年の時事用語事典に「登場」と書かれた形です。イミダスの同じ項目には、当時の招き猫の様子が短くまとめられています。
それによると、商店の店先でおなじみだったのは、左手を上げて右手に小判を抱いた招き猫でした。そうしたなか、右手を上げた招き猫は家庭用として人気を集めていたといいます。
従来は「お手上げ」を思わせるとされてきた両手の招き猫も、このころ現れたと記されています。あわせて、両手だと開運の力が倍になるという説も紹介されていました。
この記述からは、両手の招き猫が古くからの定番ではないことがうかがえます。家庭で招き猫を楽しむ人が増えたころに目立った形だったのです。
ただし、両手の招き猫がいつ最初につくられたのかを示す記録は、確認できていません。そのため研究所では、「昔から縁起が悪いと決まっていた」とも「昔から両方を招く定番だった」とも書かずにおきます。
両手の招き猫の選び方
両手の招き猫を迎えるかどうかは、誰のために、どこに置くかで考えると決めやすくなります。自分で楽しむなら両手の意味を、贈るなら相手の受け止め方を優先しましょう。
自分のために迎えるなら
自分のために迎えるなら、「お手上げ」の連想が気にならないかどうかで決めましょう。気にならなければ、お金と人の両方を一体に託す両手の招き猫は、願いに合った形です。
一方で、姿が気になる場合は、右手と左手の招き猫を二体並べる方法があります。住吉大社の初辰(はったつ)まいりでは、奇数月に左手、偶数月に右手を上げた小猫を毎月一体ずつ授かります。
48体が集まれば満願成就となり、その証として小猫を納めて一回り大きな招福猫と交換するのが習わしです。両方の願いを一体の両手ではなく、左右の猫を重ねて託す形といえるでしょう。
両方の願いを託す二つの形
| 形 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 両手の招き猫 | 一体でお金と人の両方を招くとされる | 「お手上げ」の連想が気にならない人 |
| 右手と左手の二体 | 願いを左右の猫に分けて託す | 両手の姿が気になる人 |
招き猫を何体並べるかで変わる意味や、招き猫を授かれる全国の寺社は、別の記事にまとめました。
贈り物にするとき
贈り物にするなら、相手が両手の姿をどう受け止めるかを優先しましょう。両手の招き猫を敬遠する向きがあることは、時事用語事典のイミダスにも記されています。
相手の好みがわからないときは、片手を上げた招き猫を選ぶと迷いません。開店祝いなど店に贈る場合は、店先に置かれることが多いとされる左手の招き猫が候補になります。
一方で、相手が両手の招き猫を望んでいるなら、避ける理由はありません。お金と人の両方を招くといわれる意味を、ひと言添えて贈ると気持ちが伝わりやすいでしょう。
招き猫を贈るときの考え方や、開店祝いで選ばれる色・サイズ・マナーは別の記事で紹介しています。
作り手と産地から選ぶ
両手の招き猫は、窯元が型として作り続けている形のひとつです。常滑焼(愛知県常滑市)の窯元、梅月冨本人形園の公式サイトには、定番の招き猫と並んで「両手上げ猫」の名前があります。
同じ窯元は、三匹猫や大入猫、槌もち猫、合格猫なども特種な招き猫として手がけています。研究所の取材で冨本さんは、招き猫を「見た人が笑顔になるもの」と語りました。
瀬戸の窯元であるフジコウセラミックの藤井さんも、取材で招き猫の選び方に通じる言葉を残しています。右手と左手の意味は大きく変わらないとしながら、「招き猫のあり方は、もっと自由であっていい」と話しました。
意味より形に惹かれて選んでもよい、という作り手の言葉です。そのため、両手か片手かで迷ったら、手に取ったときに心地よいと感じる一体を選ぶのもひとつの答えでしょう。
手の数を決めたら、次はどの作り手の一体を迎えるかが気になるところです。Luxen Manekiは、招き猫研究所を運営する株式会社日本招き猫総合研究所の招き猫ブランドです。
瀬戸焼の伝統窯の職人が一体ずつ手描きで金彩を施し、注文を受けてから約4〜6週間かけて仕上げています。
よくある質問
Q. 両手の招き猫は何色を選べばいいですか?
A. 色は、両手の意味に重ねたい願いから考えるのが一つの方法です。招き猫研究所の定義では、白や三毛はどの願いにも通じる開運招福の色です。黒は厄除け、赤は病よけ、緑は健康長寿、金は金運・仕事運の色としています。お金と人に加えて何を願うかで、色を決めるとよいでしょう。
Q. 両手の招き猫は欲張りだといわれるのはなぜですか?
A. 右手のお金と左手の客を、一体で両方招こうとする姿だからです。招き猫美術館の学芸員は、テレビ番組で両手の招き猫を欲張りな人向けと紹介しました。両手だと開運の力が倍になるという説も、2002年の時事用語事典で紹介されました。
Q. 両手の招き猫は、手の高さで意味が変わりますか?
A. 手の高さによって、招く福の大きさが変わるという言い伝えがあります。日本招猫倶楽部は、耳より高く上げた手を「手長」と呼び、遠くの福や大きな福を招くと紹介しました。耳より低い手は、身近な福を招くとされます。両手の招き猫も、手の高さで印象が変わるでしょう。
招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」
両手か片手かに正解がないからこそ、誰の手で、どう作られた一体を迎えるかが選ぶ決め手になります。招き猫研究所がつくる「Luxen Maneki」は、瀬戸焼の伝統窯の職人が一体ずつ手描きで金彩を施した招き猫です。
量産の招き猫との違いは、注文を受けてから約4〜6週間かけて、ひとつずつ仕上げる点にあります。お届けには、湿気を吸って吐き、燃えにくいことから昔は金庫の内箱にも使われた桐の、特製の箱を用いています。手の形だけでなく、作り手の仕事まで含めて選びたいときに、手に取ってみてください。
まとめ
両手を上げた招き猫は、お金と人の両方を招くといわれる一方、「お手上げ」に見えるとして敬遠する向きもあります。両手を上げる万歳の動作は、辞典でも祝いと降参の両方の意味をもつ言葉です。
つまり「よくない」は決まりではなく、同じ姿をどう受け止めるかの違いにすぎません。両手の招き猫は、2002年の時事用語事典に新しい形として登場したことも記されています。
選ぶときは、自分のためなら気持ちに合うかどうか、贈るなら相手の受け止め方を軸にしましょう。両手の姿が気になるなら、右手と左手の二体を並べる方法もあります。









