この記事でわかること
- 招き猫の置物は願いから5つの手順で選ぶ
- 長く飾るなら扱いやすいのは磁器の置物
- 伝統証紙と手描きの顔が工芸品を見る目安
- 古い招き猫は型の系統から時代の見当がつく
招き猫の置物は、願い→手と色→素材と産地→大きさ→置く場所の順に決めると迷いません。そのうえで、素材の扱い方と仕上がりを確かめると、長く飾れる一体に出会えます。
同じように見える招き猫の置物でも、どこを見れば違いがわかるのでしょうか。
この記事では、選ぶ手順の全体像に加えて、陶器と磁器の扱い方や工芸品の目安、古い招き猫の見方を整理しました。常滑・瀬戸の窯元や専門店への取材と、自治体や博物館の公開資料をもとにしています。
招き猫の置物を選ぶ5つの手順

招き猫の置物選びは、願いを決めることから始まります。願いが決まると、上げる手や色、素材や大きさまで順に絞り込めるためです。
招き猫の置物を選ぶときの要点
- 願い→手と色→素材と産地→大きさ→置く場所の順に決める
- 手と色は願いから、素材は飾る期間と扱いやすさから選ぶ
- 最後に、顔の描き方と傷の有無を自分の目で確かめる
5つの手順の早見表
5つの手順は、前の手順の答えが次の手順の条件になるように並べています。順に決めていけば、売り場や通販の一覧で目移りしても判断がぶれません。
招き猫の置物を選ぶ5つの手順
| 手順 | 決めること | 判断の手がかり |
|---|---|---|
| 1. 願い | 金運・客を招く・厄除け・健康など | 誰のために、何を願って置くか |
| 2. 手と色 | 右手・左手、白・金・黒・赤など | 願いに合う手と色の組み合わせ |
| 3. 素材と産地 | 陶器・磁器・張り子・土人形など | 飾る期間と手入れのしやすさ |
| 4. 大きさ | ミニチュアから大きな置物まで | 置く場所の幅・奥行き・高さ |
| 5. 置く場所 | 玄関・店先・棚・リビングなど | 毎日目に入り、落ちる心配がないか |
このうち手順1と2は、縁起物としての意味を決める段階です。一方で、手順3から5は、置物として長く飾れるかを決める段階といえます。
そのため、意味だけで選んで素材や寸法を見落とすと、置いてから扱いに困ることもあるでしょう。この記事では、手順3以降の置物としての見方を中心に掘り下げます。
デザインの型や好みから入りたい場合は、おしゃれな招き猫の選び方を別の記事にまとめました。
手と色は願いから決める
上げる手と体の色は、込めたい願いから逆算して決めます。日本招猫倶楽部によると、右手を挙げた姿は「お金」を、左手の姿は「人やお客」を招くといわれています。
願いと色の組み合わせ(公式の説明と研究所の定義)
| 色 | 日本招猫倶楽部の説明 | 招き猫研究所の定義 |
|---|---|---|
| 白 | 開運招福・家内安全 | 開運招福 |
| 金 | 金運満足 | 金運・仕事運 |
| 黒 | 厄除開運 | 厄除け |
| 赤 | 健康長寿 | 病よけ |
| 緑 | 記載なし | 健康長寿 |
| ピンク | 恋愛成就 | 恋愛成就 |
| 黄 | 記載なし | 人望招福 |
| 青 | 記載なし | 学業向上 |
一方で研究所は、赤を病よけ、緑を健康長寿と分けて定義しました。
ただし、研究所の定義も伝統的に決まった意味ではありません。どの色も、置けば願いが叶うと約束するものではない点は同じです。
つまり、手と色は願いを形にする目印です。商いの場なら左手、金運を願うなら右手と金色というように、願いの言葉から選ぶと迷いません。
手・色・小判などの意味や、右手と左手の違いが生まれた背景は、それぞれ別の記事で詳しく紹介しています。
素材と産地で選ぶ招き猫の置物
置物として長く飾れるかどうかを、大きく左右するのが素材です。招き猫の素材は、陶器・磁器などの焼き物と、張り子・土人形などの郷土玩具に大きく分けられます。
陶器と磁器の違いと扱い方
毎日の手入れを楽にしたいなら、水を吸いにくい磁器の招き猫が向いています。土岐市の陶磁器試験場によると、磁器の吸水率はほとんど0%で、扱いやすさでは磁器が楽です。
陶器と磁器の違い
| 比べる点 | 磁器 | 陶器 |
|---|---|---|
| 主な原料 | 陶石 | 陶土 |
| 焼く温度 | 1300℃前後 | 1200℃程度が多い |
| 水の吸いやすさ | ほとんど吸わない | 10%近く吸うものもある |
| たたいたときの音 | 澄んだ音 | やや低く鈍い音 |
| 扱うときの注意 | 扱いが楽 | よく乾かして保管する |
陶器の素地には細かな穴が多く、水を吸いやすい性質があります。そのため、湿ったまま保管すると、カビが生えることもあると同試験場は説明していました。
一方で、陶器は穴が多い分、同じ厚みでも磁器より軽くなります。土の色が出る素朴な風合いも陶器ならではの味わいで、どちらが優れているというものではありません。
ただし、焼き物は割れると元に戻せません。瀬戸のフジコウセラミックの藤井さんは、新築祝いに贈った招き猫を割ってしまい、もう一度欲しいと頼まれた話をしていました。
だからこそ、水回りを避け、落ちにくい場所に置くことが大切です。陶器と磁器の違いや、産地の名前が語る物語は別の記事で詳しく紹介しています。
張り子・土人形など郷土玩具の素材
素朴な味わいを求めるなら、張り子や土人形の招き猫も選択肢になります。張り子は、木型に紙を重ねて張り、乾いてから型を抜いて作る人形です。土人形は、文字どおり土を材料にした人形を指します。
ほかの縁起物と比べると、素材の移り変わりは招き猫の特徴です。だるまは辞書で「張り子の人形」と説明されるほど、張り子が中心の縁起物といえます。
これに対して、招き猫は江戸の今戸焼に始まり、関東では張り子の招き猫も作られました。つまり、招き猫は素材を変えながら広まった縁起物なのです。
なお、紙や土の招き猫は、焼き物とは扱い方が異なります。迎えるときは、作り手や店が案内する飾り方と手入れの方法を確かめてください。
江戸の下町で今戸焼の招き猫がどう育まれてきたのかは、別の記事で紹介しています。
木目込み人形・博多人形・張子など、焼き物以外の人形の招き猫は別の記事で比べています。
産地の表示から型の系統を知る
産地の表示は、その招き猫がどの型の流れにあるかを知る手がかりです。日本招猫倶楽部は、主な産地として瀬戸市・常滑市・多治見市・金沢市・小松市を挙げています。
あわせて、海外での生産も盛んだと紹介していました。産地の表示を見れば、国内のどの土地で作られたのか、海外で作られたのかがわかります。
愛知県の招き猫には、小判を抱えた二頭身の「常滑系」と、細身で前垂れを着けた「古瀬戸系」の2つの系統があります。
そのため、産地の表示と姿をあわせて見ると、どちらの流れにある一体かを見分けやすくなるでしょう。
常滑・瀬戸・九谷など、産地ごとの招き猫の違いは別の記事で詳しく扱いました。
工芸品と量産品の違いと品質の見方

工芸品の招き猫かどうかは、名前ではなく、証紙・作り方・仕上がりで見分けます。招き猫の置物は、作られ方によって表情や仕上がりが変わるためです。
伝統的工芸品と伝統証紙
国が指定する「伝統的工芸品」には、経済産業省が定める5つの要件があります。主に日常生活で使われることや、製造の主な部分が手工業的であることなどです。
さらに、伝統的な技術や原材料で作られ、一定の地域で産地を形成していることも求められます。伝統的工芸品産業振興協会によると、指定された技術・原材料・製造地域をすべて満たさないと、この名前は名乗れません。
つまり、産地の名前がついているだけでは、伝統的工芸品とは限らないのです。そこで目安になるのが、検査に合格した品に貼られる「伝統証紙」です。
同協会は、伝統的工芸品には精巧な類似品も多く、一般の人が見分けるのは難しいと説明しています。だからこそ、証紙を貼ることで識別のめやすを示しているのです。
ただし、手仕事で作られた招き猫のすべてに証紙が貼られるわけではありません。証紙がない場合は、産地や作り手の表示と、次に紹介する顔と仕上がりで判断しましょう。
手描きの顔と型づくりの個体差
工芸品の招き猫を見分ける一番の手がかりは、筆で描かれた顔です。陶器の招き猫の多くは型で形を作るため、体の形は同じでも、顔は一体ずつ違ってきます。
常滑の梅月冨本人形園では、泥漿(でいしょう:液状にした粘土)を石膏の型に流して形を作るのが最初の工程です。そのあと、表情を決める目とひげを、職人が筆で描き入れています。
冨本さんが最も気を配る工程は、目の描き入れです。目の線は一度入れると描き直せないため、筆を置く瞬間に迷いは許されないといいます。
一方で、絵付けには、用意した絵柄を写し取って焼き付ける転写という方法もあります。瀬戸のフジコウセラミックも、手がける技法のひとつに転写の絵付けを挙げていました。
そのため、顔の線の太さや目の位置を何体か見比べると、手描きかどうかの見当がつきます。最後は顔を見て決めるとよいでしょう。
常滑で招き猫の顔に向き合う作り手の話は、取材記事にまとめました。
ヒビ・欠け・歪みを確かめる
手に取って選べるなら、ヒビ・欠け・歪みがないかを自分の目で確かめましょう。窯元も、出荷の前に同じ点を厳しく見ています。
フジコウセラミックは、電線を支える碍子(がいし:電気を通さない焼き物の部品)と同じ水準で検品しているそうです。ヒビ・欠け・歪みのある品は通さず、1ロットまるごと作り直すこともあると話していました。
梅月冨本人形園も、仕上げと品質の確認は自分たちの目が届く範囲でおこなっています。傷のチェックから触り方、扱い方まで、どれかが崩れると全体の質が落ちると考えているからです。
招き猫の置物を手に取って確かめること
| 確かめる点 | 見るところ |
|---|---|
| ヒビ | 表面に細い割れ目が入っていないか |
| 欠け | 耳の先や縁が欠けていないか |
| 歪み | 平らな場所に置いて傾かないか |
| 顔 | 目の大きさや輪郭、左右の釣り合い |
一方で、焼き物には同じ型でも一体ずつ微妙な差が生まれます。藤井さんは、その差を不揃いではなく人の手を通った証と受け止めていました。
つまり、傷は避け、個体差は味わいとして選ぶのが、焼き物の招き猫との向き合い方です。焼成や検品にかける瀬戸の窯元の判断は、取材記事で詳しく紹介しています。
とはいえ、産地・作り手・手描きかどうかがすべて見える招き猫は多くありません。その実例のひとつが、招き猫研究所を運営する株式会社日本招き猫総合研究所のブランド「Luxen Maneki」です。
瀬戸焼の伝統窯の職人が、一体ずつ手描きの金彩で仕上げています。
アンティーク・古い招き猫の見方
古い招き猫は、値段や真贋ではなく、系統と時代の手がかりで楽しむと見方が深まります。型の流れを知っておくと、骨董市や古道具の店で出会った一体がどの時代の姿なのか見当をつけられるからです。
古い招き猫の系統と時代
古い招き猫は、型の系統から見分けるのが第一歩です。系統ごとに、作られ始めた時代と主な素材がわかっています。
古い招き猫の主な系統
| 系統 | 姿の特徴 | 時代と素材 |
|---|---|---|
| 今戸焼の丸〆猫 | 片方の前足を上げ、尻に丸で囲んだ「〆」 | 江戸。今戸人形(土人形) |
| 古瀬戸系 | 細身で前垂れを着け、小判を持たない | 明治30年代から瀬戸で磁器の量産 |
| 常滑系 | 丸い大きな目と二頭身で、小判を抱える | 昭和20年代に生まれた陶器 |
丸〆猫は、招き猫の最も古い作例とされる今戸人形です。江戸東京博物館も、今戸人形の丸〆猫を収蔵資料として公開しています。
瀬戸は、明治30年代に磁器の招き猫の量産を国内で最初に始めた土地です。つまり、細身の磁器の招き猫は、量産の始まりを伝える姿といえるでしょう。
招き猫が江戸から今の姿になるまでの道のりは、歴史の記事で詳しく紹介しています。
復刻品と年代の手がかり
古い型の招き猫でも、古い時代に作られたとは限りません。日本招猫倶楽部は、廃絶した郷土玩具の名品や窯元の逸品を、瀬戸の製陶技術で復刻してきました。
そのため、古い型を今の窯で焼いた招き猫も、愛好家向けに頒布されています。形だけで年代を決めず、売り手に来歴を尋ねてから迎えるとよいでしょう。
素材や産地から古い招き猫の年代を見分ける手がかりと、売り買いの注意点は次の記事で紹介しています。
大きさと置き場所で仕上げる

素材と品質を確かめたら、最後に大きさと置き場所を合わせます。置き場所が決まれば寸法の上限が決まるため、買ってから収まらないという失敗を防げるためです。
大きさは置く場所の寸法から決める
大きさは、置く場所の幅・奥行き・高さを測ってから決めましょう。日本招猫倶楽部によると、招き猫の飾り方に決まりはありません。
ただし、昔は庶民の信仰の対象として、やや高い所に安置し、水などを供えたようだと同倶楽部は紹介しています。あわせて、身近に置き、いつも目に付くようにすることを勧めていました。
そのため、目線より少し高い棚や、出入りのたびに目に入る場所を候補にするとよいでしょう。焼き物は落とすと割れるので、奥行きに余裕のある場所を選ぶことも欠かせません。
通販で選ぶときは、写真の印象ではなく、表示された高さと奥行きを置く場所の寸法と照らし合わせてください。置き場所と願いから大きさを決める考え方は、別の記事で紹介しています。
玄関や風水で置き場所を考えるとき
置き場所に迷ったら、人と福が入ってくる入口から考えるのが基本です。招き猫はもともと店先に置かれてきたため、家では玄関が最初の候補になります。
一方で、風水を取り入れて方角から置き場所を決めたいという人もいるでしょう。風水は、山や川のようすと陰陽の気を見て、住まいなどの場所を選び定める術とされています。
ただし、風水は住まいの場所選びの考え方で、招き猫の置き方を定めた決まりではありません。風水を取り入れる場合も、毎日目に入るかどうかを優先すると、置いたまま忘れることがなくなります。
店先・玄関・方角ごとの置き方と、それぞれの考え方の根拠は、置き場所の記事と風水の記事で詳しく扱いました。
よくある質問
Q. 九谷焼の招き猫の置物にはどんな特徴がありますか?
A. 九谷焼の招き猫は、豪華な絵付けが特徴です。華やかな絵付けが多いため、飾る部屋の色合いと合わせて選ぶとよいでしょう。
Q. 金色の招き猫の置物にはどんな意味がありますか?
A. 金色の招き猫には、金運の願いが込められてきました。日本招猫倶楽部も、金は「金運満足」を招く色と紹介しています。研究所の定義では、金は金運に仕事運まで含めた色です。ただし、伝承として受け継がれてきた意味で、置けば金運が上がると約束するものではありません。
Q. 招き猫の置物はどこで買えますか?
A. 招き猫の置物は、寺社の授与所、常滑や瀬戸など産地の窯元、招き猫の専門店、百貨店や雑貨店、通販などで手に入ります。顔や傷を自分の目で確かめたいなら、手に取って選べる窯元の直売所や専門店が向いています。通販では、産地・素材・寸法の表示を確かめてから選びましょう。
招き猫研究所がつくる招き猫「Luxen Maneki」
招き猫の置物は、願いで選び、素材と仕上がりで確かめることで長く飾れる一体になります。とはいえ、工芸品の招き猫がどこまで人の手をかけて作られているのかは、店頭や写真だけでは見えにくいものです。
研究所が手がける「Luxen Maneki」は瀬戸焼の招き猫で、伝統窯の職人が一体ずつ手描きの金彩を施しています。白・金・黒の3色があり、注文を受けてから約4〜6週間かけて仕上げます。
特製の桐箱に納めてお届けする点も、Luxen Manekiの特徴です。桐は湿気を吸って吐き、燃えにくいことから、昔は金庫の内箱にも使われてきた木です。作り方まで確かめて選びたいなら、選択肢のひとつとして確かめてみてください。
まとめ
招き猫の置物は、願い→手と色→素材と産地→大きさ→置く場所の5つの手順で選べます。手と色は願いから、素材は飾る期間と手入れのしやすさから決めましょう。
長く飾るなら、水を吸いにくい磁器は扱いが楽です。陶器を選ぶ場合は、よく乾いた場所に置いてください。
工芸品かどうかは、伝統証紙と産地・作り手の表示、そして筆で描かれた顔とヒビ・欠け・歪みの有無で確かめます。古い招き猫は型の系統と持ちものから時代の流れを読み、来歴を説明できる店で迎えると安心です。













